事務所通信別冊

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2024年12月号 夫婦連生団信、ペアローンにも広がる NEW!!!

 近年、首都圏の不動産価額は増加傾向にありますが、同時に若い時からマイホームの購入を検討する人の割合も増加傾向です。元より30代のマイホームの保有率は半数以上と言われていますが、20代の持ち家率も過去最高に達し、「3世帯に1世帯はマイホームあり」との記事が今年の3月に日経新聞にも取り上げられていました。その背景には資産形成の一環としての購入もあるようです。

共働きの夫婦の場合、夫婦それぞれが住宅ローンを契約する「ペアローン」を選択すると、単独住宅ローンの借入額よりも多く借りることが出来るため、都市部では住宅価額の高騰が続き近年では利用率が高まっています。

 上記の表はペアローン返済のメリット・デメリットを抜粋したものになりますが、今年からよりローンを組みやすい仕組みが登場しています。ペアローンでは契約者が死亡したときなどに返済を免除する団信に夫婦がそれぞれ加入しますが、通常、免除されるのは契約者本人の債務のみです。残った配偶者名義の債務は残るため、1人で仕事と子育てなどの両立に直面して収入が減れば支払いが難しくなることもあります。

そんなペアローン利用者の不安にこたえる形で、残された人の債務もまとめて免除する「ペアローン団信」が今年の6月から新たに始まりました。住宅ローンに上乗せの金利を支払うことで利用ができます。ペアローン団信には①死亡または所定の高度障害状態を対象にした一般団信と②一般団信に加え、がん保障特約をつけた団信の2種類があります。気を付けなければいけないのは、上乗せ金利だけではありません。仮に配偶者に万一のことがあり、自分の支払いを免除されたとします。その場合免除された自分の債務というのは、所得税の一時所得の対象となります。債務残高が大きいうちに万一が起これば確定申告で数百万円単位の納税が必要になることもあります。ここまで書いてきましたが、新しくできたこの仕組みが一番いいというわけではありません。ペアローン団信を使わずに、配偶者が死亡した場合に備えて、個別に生命保険契約に加入する選択肢もありますし、そもそもペアローンではなく、連帯債務でローンを組む方法もあります。自分たちのライフスタイルに合った方法はなにかを、検討することが大切になってきます。

2024年11月号 来月施行!フリーランス法への対応準備はできていますか?

2024111日より特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス法)がいよいよ施行されます。施行まで残り1ヶ月となりましたので、改めて内容を確認したいと思います。まだ準備ができていない場合には、確認の上施行までに対応を進めていきましょう。

今回の法律は発注する事業者とフリーランスの間の取引の適正化を目的とされています。まずは、フリーランスの対象の範囲を理解しなければなりません。今回のフリーランス法でのフリーランスとは、「業務委託の相手方である事業者で従業員を使用しないもの」とされています。そのため、個人事業主が従業員を雇用して働いているような場合には、フリーランス法でのフリーランスには該当しません。一方で、代表者以外に他の役員がおらず、従業員を雇用していない法人については、フリーランス法でのフリーランスに該当します。まずは、フリーランスにどの程度業務を委託しているかについて確認を進めるようにしましょう。

フリーランスにどの程度業務を委託しているか確認ができましたら、今回のフリーランス法にて義務として定められた項目について対応を進める必要があります。例えば今までフリーランスの方との取引でこんな事行っていませんでしょうか?これらの項目はフリーランス法に定められている禁止行為に該当する可能性があります。

 

①仕事として依頼していないことを、依頼している業務とあわせて無償でやってもらった

   →「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に該当する可能性があります。

②商品の納品後に、追加の費用なしでやり直し、再度納品してもらった

→「不当な給付内容の変更・やり直しの禁止」に該当する可能性があります。

③商品の納品後に、必要がなくなったため返品をした

   →発注側の事情で不要になり返品するような場合、「返品の禁止」に該当する可能性があります。

 

上記であげた例はフリーランス法の7つの義務項目の禁止行為の一例です。フリーランス法については、過去のAin通信9月号においても発注事業者のための111日施行「フリーランス法」のポイントとして記事が掲載されていますので、是非改めてご覧いただきフリーランス法への対応を進めていただければと思います。

2024年10月号 定額減税 こんな時どうする?Q&A

 始まる前はどうなるのか不安もあった定額減税ですが、給与明細の記載義務化などTKCの給与システムの対応もあり、想像していたより問題なく月次減税事務を行うことが出来たのではないかと思いますが、いかかでしたでしょうか?

3カ月ほど経ち、月次減税事務も一段落した状況だと思いますが、今回は今後起こりうる事例ついてQA形式でまとめてみました。

Q19月に子どもが生まれた従業員から「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出がありました。その場合は今月の給与から月次減税額を追加すれば良いでしょうか?

A16月の最初の給与(賞与)後は、扶養親族の異動等に関して申告書の提出があったとしても、月次減税額の増額(減額)は行いません。年末調整又は確定申告により精算されることになります。

Q25月から休職していた従業員が9月に復職しました。定額減税は、年末調整時で良いでしょうか?

A26/1在籍の従業員は月次減税の対象となりますので、復職後の給与から月次減税を行う必要があります。

Q3月次減税をしている従業員が退職することになりました。減税しきれなかったのですが、源泉徴収票にはどのように記載すれば良いでしょうか?(退職時に年末調整を行わない場合)

A3再就職先での年末調整又は確定申告で最終的な定額減税との精算を行うことになるため、 定額減税額の記載は必要ありません。なお、「源泉徴収税額」欄には、控除前税額から月次減税を控除した後の実際に源泉徴収した税額の合計額を記載することになります。

参考:国税庁「令和6年分所得税の定額減税Q&A」

 他にも月次減税・年末減税についてご質問がございましたら当事務所へお問合せください。

 また、年末に向けふるさと納税先をどこにするかお考えの方も多いと思います。気になるのは定額減税の影響ですが、ふるさと納税の限度額は、「特別控除(=定額減税)の額を控除する前の所得割の額」が算定の基礎となり、定額減税による影響はありませんのでご安心ください。ふるさと納税したことで、定額減税の一部を控除しきれなかった場合は、調整給付金が支給されます。(調整給付金についてはお住まいの市区町村にお問合せください。)


2024年9月号 令和6年度 賃上げ促進税制

夏季賞与の支給時期が一段落しましたが、まだまだ物価高&人材難の影響により賃上げの動きは強いと見られています。そのような動向を踏まえ、令和6年度税制改正では賃上げをする法人・個人事業主を支援するために「賃上げ促進税制」がより強化されています。

ご存じの経営者も多いと思いますが、「賃上げ促進税制」を簡単に説明すると、前期に支給した給与賞与と比較して当期支給した給与賞与が増加している場合、法人税等について給与賞与の増加額×最大45%(大企業は最大35%)の税額控除が受けられる(税金が減る)というものです。令和6年度税制改正では適用期間が3年延長され、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度を対象として、以下のような変更点があります。

               

今回は中小企業に関する変更点を中心に説明します。


(1)-b.上乗せ要件① 教育訓練費

「教育訓練費が全雇用者に対する給与等支給額の0.05%以上」の要件が追加されましたが、増加率は大企業の場合20%10%、中小企業の場合10%5%に要件が緩和されました。


(1)-c.上乗せ要件② 子育て支援・女性活躍支援

厚生労働大臣から「子育てサポート企業」としてくるみん認定、もしくは「女性活躍推進企業」としてえるぼし認定を受けている場合、税額控除率が5%上乗せされます。


(2)繰越控除制度(中小企業のみ)

「賃上げ促進税制」は赤字の場合は適用できない(納付する法人税等がないため)もしくは控除限度額が法人税等の20%であるため控除しきれないという問題がありました。この改善策として控除できなかった金額を翌事業年度以降5年間にわたって繰り越すことができるようになりました。


 適用には諸条件ありますので、賃上げを検討している場合は当事務所にご相談ください。

2024年8月号 役員報酬 事前確定給与の支給には注意しましょう

 7月になりまして、世間一般的には夏季の賞与が6月下旬から7月上旬のちょうど今の時期に支払われることが多いようで、賞与が待ち遠しいなんて人も多いのかもしれません。一方で昨今では賃上げの動きが強く、賞与も増加していくとなると、支払う経営者側からすると頭を悩ませる部分でもあるでしょう。今回はそんな賞与の「役員に対する賞与」についてふれていきたいと思います。

 

 役員報酬については、支払ったものが全て損金に算入されるかというとそうではありません。例えば、今期業績もいいので役員に対して通常の給与とは別に賞与を支払うといった場合も、あらかじめ税務署に届出(事前確定給与に関する届出)を提出していなければ、支給しても損金に算入することはできません。届出には支払金額、支払日を記載する必要があり、その記載した内容と相違のある支給をしてしまった場合も、損金に算入することができなくなってしまうため注意が必要です。また、届出は支払内容を株主総会等で決議した後に、一定の期間内に提出する必要があります。簡単な説明にはなってしまいましたが、事前確定給与に関する届出を提出することで、通常の給与とは別に支給することができることはわかっていただけたかと思います。従業員の賞与と同じ時期に支給をするということも可能にはなりますが、その性質は異なるので次にその点について説明していきたいと思います。

 一般的に従業員の賞与の場合、例えば令和67月支給賞与についてはその計算期間は令和510月から令和63月といったような過去の実績をもとに支給を行います。一方で役員の事前確定給与については、一般的に決議した株主総会から次の株主総会までの期間の報酬対価になりますので、3月決算法人で令和65月に株主総会が行われたような場合ですと、令和65月~令和75月の期間の報酬対価となります。先の例での従業員の賞与と同じ令和67月に支給をしたとしても、それは令和75月までのこれから先の期間も含んだ報酬対価ということになるのです。

 以上をふまえると、今期業績は好調だが、事前確定給与の届出を提出していなかった場合に、来期事前確定給与の届出を提出し、今期支給できなかった分を来期で事前確定給与として支給するというのは可能ではありますが、報酬対価に対する期間の考え方としては正しくないということも理解できます。事前確定給与については今回ふれた点以外にも落とし穴が多くありますので、検討する際は当事務所にご相談ください。

2024年6月号 ~飲食費の金額基準改正~飲食費の範囲とは?

 令和6年度税制改正では、交際費等の損金不算入制度について、交際費等の範囲から除外される飲食費の金額基準が「1人当たり1万円以下(改正前:5,000円以下)に引き上げられました。今回の改正は、金額基準のみとなりますが、改めて交際費等の範囲について確認をしていきたいと思います。

交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものと法人税法では定められています。よって、事業に関係のない人に対して行われた接待等の費用は、否認される恐れがありますので注意が必要です。

交際費等の額は、原則として、その全額が損金不算入(費用と認められない)とされていますが、法人の区分に応じ一定の措置が設けられています。資本金が1億円以下である中小企業者は、飲食費の50%又は定額控除限度額である800万円までは、損金算入(費用として認められる)することができます。これらの措置は時限立法となっており、期限があります。令和6331日までとなっていましたが3年間延長され、令和9331日までとなっています。

さて、今回の改正で金額基準が引き上げられた「飲食費」の範囲について確認していきましょう。飲食費とは「飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除く)とされており、下記のものが該当します。

金額基準は引き上げられましたが、改正前と同様に一定の事項を記載した書類を保存しなければなりません。(①飲食等のあった年月日②参加者の氏名や関係③参加人数④飲食費用の額、飲食店の名称及び所在地⑤その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項)特に②や③の事項について記載漏れ、把握漏れが多いかと思います。金額基準を満たしていたとしても、記載漏れがある場合には交際費として課税されますので注意が必要です。

また、1人当たり1万円以下の判定については、会社の経理が税抜経理であれば税抜1万円以下となり、税込経理をしているのであれば税込1万円以下で判定を行います。消費税の課税事業者であれば、税抜経理をしている所が大半かと思います。(免税事業者は税込経理処理が強制適用となります)

今回は触れられませんでしたが、飲食費に該当しないものや社内飲食費の取り扱いなども細かく定められております。また、税務上は交際費ではなく寄付とみなされるケースもあります。経理処理をする上で、疑問点等ありましたら早めに監査担当者へご相談をお願いします。

2024年5月号 森林環境税と森林環境譲与税について

 突然ですが、皆さんは日本の国土の約70%が森林であることを知っていますか?そんな森林の機能を十分に発揮させるために、森林環境税という名前で2024年度から1人年額1,000円が徴収されます。なお、東日本大震災復興基本法の理念に基づき、徴収されていた年額1,000円が2024年度からはなくなり、森林環境税が導入されるため徴収される金額は前年と変わっていません。

 森林環境税とは、国内に住所のある個人に対して課税される国税であり、市町村において個人住民税均等割と併せて徴収される税金で、税収は1年で約600億円にのぼるといわれています。この徴収された税金は政府が回収し、回収した全額を国が「森林環境譲与税」として都道府県・市町村へ譲与する仕組みです。

       

       総務省:森林環境税及び森林環境譲与税

 森林整備が緊急の課題であるため、森林環境譲与税は2019年度(令和元年度)から前倒しで国庫の交付金として都道府県・市町村へ譲与されています。

1.    問題点

森林環境譲与税の都道府県・市町村への配分は、私有林や人工林の面積に応じた配分が50%、人口に応じた配分が30%、林業従事者数に応じた配分が20%となっており、森林がなくても人口が多い都道府県・市区町村には多額の譲与税が配分されることが問題視されています。この配分された譲与税は都道府県及び市区町村でどのように使ったかホームページなどで明記しなければなりません。

また、大阪府など独自に導入している森林環境税があり、「二重課税ではないか?」と問題になっています。

2.    江戸川区での使われ方

東京都産業労働局のホームページでは、東京都の令和元年度から令和4年度の森林環境譲与税の使途と、都内市区町村の令和元年度から令和4年度の譲与税の使途の事例を確認することができます。当事務所がある江戸川区は令和4年度に73,874千円交付されており、国産の木材を使って小学校の内装の改築や備品の購入に充てています。

  皆さんの住んでいる地域ではどのような用途で使われているか、調べてみてはいかがでしょうか?

2024年4月号 有給休暇の管理にもPXシリーズを活用しましょう

 Ain通信では残業時間の管理について、PXシリーズの役立つ機能をご紹介しました。有給休暇も取得状況などを簡単に管理できますが、皆さんご活用いただいておりますか?

 PXシリーズでは、労働基準法で作成が義務化されている「有給休暇管理簿」、有給付与日数・月ごとの取得状況(日数)を確認できる「有給休暇取得状況一覧表」、社員・部門別での有給休暇消化率が確認できる「年次有給休暇の消化率」が出力できます。

 20194月からは、使用者は法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の労働者に対して「年5日の年次有給休暇の取得」が義務付けられました。違反した場合、30万円以下の罰金が科せられますが、労働者ごとに成立すると考えられるので、5名の従業員に取得させなかった場合は、150万円以下の罰金に科せられる可能性があることになってしまいます。うっかり・・・ということがないよう、定期的な管理や取り組みが必要になります。

 そして、年5日の有給休暇を確実に取得する方法を一部ご紹介します。

 

 ※計画年休を導入するには就業規則等への明記と労使協定の締結が事前に必要になります。

継続的に良いパフォーマンスを維持し仕事で成果を出すためには、休暇を活用して定期的にリフレッシュし、次の仕事にむけて心身ともにコンディションを整えることが重要です。生産性の向上や離職率低下も期待できます。有給休暇の管理にも、ぜひPXシリーズをご活用ください。


2024年3月号 税金の納付方法~キャッシュレス決済をお得に利用~

所得税・住民税等の税金は納付書で納める他に、TKCシステムをご利用の場合、「電子納税かんたんキット」を利用してダイレクト納付またはインターネットバンキング等で納めている法人が大半だと思いますが、昨今のキャッシュレス化の影響により、国税・地方税ともにPay払い(スマホアプリ納付)での納税ができるようになっています!

基本的に納税は現金または預金が減少するだけというイメージですが、Pay払いを利用すると税金の納付自体にはポイントがつきませんが、クレジットカード等からのチャージにはポイントが加算されますので、現金・預金で納付するよりポイント分はお得になります。ただし、Pay払いについては制限()がありますので、すべての法人が他の決済方法の代わりに利用できるわけではありませんが、確定申告で国税(所得税・消費税)または毎年地方税(固定資産税、自動車税等)を納付している個人でスマートフォンをお持ちの方はチャレンジしてはいかがでしょうか?

)スマホアプリはパソコンには対応しておらず、スマートフォンがなければできません。法人内で共有のスマートフォンがあれば話は別ですが、基本的には個人に紐づくスマートフォンで決済して立替精算をすることになるでしょう。
デメリットとして、納付できる税金の上限は1回あたり30万円ですので税額が大きい場合は利用できません。領収書は発行されません。地方税は納付書に印字された情報が必要ですので口座振替を利用している場合等は納付書の送付依頼が必要です。

 Pay払いの具体的な納付方法の概要は以下の通りです。国税と地方税で納付方法が異なります。 

国税の場合 スマートフォンから「国税スマートフォン決済専用サイト」にアクセスし、必要事項を入力して決済します。

    


地方税の場合 納付書に印字されたバーコード又はeL-QRをスマホアプリで読込・決済します。

    


2024年2月号 確定申告 所得の申告漏れに注意! 

 2月になり、確定申告の時期がやってきました。改めてですが、令和5年分の確定申告時期は令和6216日~315日までの期間となります。なお、還付申告については、215日以前でも行うことができます。近年ではふるさと納税が広まったことや副業を行う人が増えたこと、また申告自体もスマホを使って申告できるなど環境が整ってきたこともあり、より身近なものとなってきました。確定申告をする際に注意したいのが所得の申告漏れです。

    副業の所得20万円以下は確定申告しなくてよい??

 会社員が給与を受け取る一方で副業で収入を得ていた場合、副業の所得が20万円以下の場合は確定申告を行う必要はないこととされています。ただし、医療費控除やふるさと納税での寄付金控除等で確定申告を行う場合には、20万円以下の副業の所得であっても含めて申告をする必要があります。確定申告を行う場合に、20万円以下の所得は申告をしなくていよいと勘違いしないように注意が必要です。

 

    退職金については確定申告しなくてよい??

 一般的に退職金に係る所得税等は源泉徴収によって課税がされ、確定申告を行う必要はありません。しかしながら、①と同様に医療費控除やふるさと納税での寄付金控除等で確定申告を行う場合は、退職金についても含めて申告を行う必要があるので注意が必要です。含めることで変わる場合があるのが、基礎控除の金額です。

 基礎控除は、合計所得金額が2400万円以下の場合は48万円控除となりますが、2400万円超から段階的に控除額が下がり、2500万円超の場合は基礎控除額が0円となります。判断の基準となる合計所得金額には、退職金の所得についても含まれるため、含めて申告する必要があります。医療費控除等で申告したはいいが、基礎控除が0円になって、結果的に損をしたとならないように注意が必要です。

 

    株の配当や譲渡益については申告しなくてよい??

 令和611日より、いわゆる新NISAがスタートし、より投資への注目は増している状況です。NISAは非課税のため申告の必要がなく、また源泉徴収選択口座を利用している場合も口座内で課税関係が完結するため、基本的には申告の必要はありません。しかし、源泉徴収選択口座でない口座での取引、非上場株式、海外で保有している株式など申告の必要があるものも多くあるので注意が必要です。

 上記で紹介したもの以外でも、うっかり所得の申告漏れというのは起きてしまいますので、申告の前に一年分の入出金を振り返ってみるというのもよいかもしれません。

2024年1月号 所得税・個人住民税の定額減税

 昨年1214日に公表された令和6年度税制改正大綱についてはニュースや新聞等で皆様も既にご承知のことと思います。今月号では、所得税・個人住民税の定額減税について取り上げてみたいと思います。なお、正式な税制改正は春頃に決定する予定です。

 日本の経済は、賃上上昇・消費拡大・投資拡大の好循環の実現にはまだ至っていません。デフレに後戻りさせないため、一時的な措置として、令和6年分の所得税及び個人住民税の減税が実施されます。 

  

※令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下の人が対象(給与所得のみの場合、収入2,000万円以下)

実施方法は、給与所得者のケース、年金受給者のケース、事業所得者等のケースとそれぞれ取り上げられていますが、ここでは給与所得者のケースをご紹介します。まず所得税については、令和661日以後最初に支給される給与等から控除される源泉所得税から特別控除の額を控除することとなります。なお、6月分の給与で控除しきれなかった場合には、7月以降順次控除することとなります。例えば、毎月の給与から控除される源泉所得税が12,000円だった場合、6月及び7月の源泉所得税は0円、8月の源泉所得税は6,000(30,000円-  12,000円×2)9月以降の源泉所得税は通常通り12,000円となります。差し引かれる源泉所得税が少なくなれば、手取り額が増えるため、給与所得者に還元されるという仕組みになっています。住民税については、特別徴収義務者(会社)は令和66月の給与支給時には、特別徴収を行わず、特別控除の額を控除した後の個人住民税の額の11分の1の額を令和67月から令和75月まで、それぞれ給与の支払いをする際毎月徴収します。例えば、年間の給与から引かれる個人住民税の総額が240,000円だった場合、240,000円-10,000円=230,000円を令和67月から令和75月までの11ヶ月間で均等に給与から徴収することとなります。

 なお、上記でご説明した以外にも注意が必要な点はいくつかあります。給与と公的年金を両方もらっているケースの実施方法など公表されていない部分も多い状況です。今後どのようになっていくのか、動向に注目したいですね。個人的な感想としては、「手取り額が数ヶ月間増えていたが、気にしなかった」という人や、「そもそも手取り額が増えていたことも気づかなかった」という人が大半を締めそうな感じがします。実施したことによる影響度などを、見える形で公表してもらいたいものです。