昨今は企業の成長戦略の一環としてM&Aという手段の検討・実施が増加しているようで、未公表のものを含めると年間で、1万件を超えるM&Aが行われているといわれています。今後は中小企業においても、事業拡大・後継者不在問題の解決策等として、耳にする機会が増えてくることでしょう。今回はそんなM&Aについて取り上げたいと思います。
M&A(Mergers(合併) and Acquisitions(買収)の略)という言葉はよく耳にはしますが、M&Aには株式取得による会社の買収や事業譲渡、合併等含まれており、実際のところ意味は様々です。中小企業のM&Aと言いますと、株式譲渡による買収や事業譲渡が多いかと考えられます。株式譲渡の場合は、会社で行われている全ての事業が買主側に渡りますが、一方で事業譲渡は、譲渡する事業が買主側に渡り、譲渡しない事業については売主側に残るため、M&Aとしての対象範囲が異なります。
それでは実際に行うとなった場合、どのような流れになるか簡略化して記載しますと、下記の図のようになります。
どれも重要な内容ではありますが、契約を締結する前のデューデリジェンスは売主・買主共に正確な企業経営の実態や事業運営の手法を共有し、最終的な売買金額を決める上で重要な役割を担います。一言にデューデリジェンスと言っても財務、税務、法務、人事等確認することは様々です。場合によっては複数の専門家と相談をしながら進めていく必要もあり、時間もかかることが考えられるため注意が必要です。
M&Aは、企業の発展や問題解決の手法として優れた手法の1つではありますが、M&Aによるトラブルが増加しているのも実情です。実際に進める際は、できるだけ早い段階で弊社にもご相談ください。
2025年4月1日より、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」に基づく経過措置が終了します。経過措置とは、2013年の法改正時点で継続雇用制度の対象者を限定していた企業に認められていた猶予期間のことです。2025年4月1日以降は、定年を65歳未満に定めている事業主は雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
また、「雇用保険法等の一部を改正する法律」の施行により、2025年4月1日から高年齢雇用給付の支給率も変更になります。高年齢雇用継続給付とは、60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける、60歳以上65歳未満の一定の一般被保険者の方に支給される給付のことを言います。現行制度では賃金の最大15%が支給されますが、今後は下記の支給率に変更になります。
対象となるのは2025年4月1日以降に60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年以上ない方はその期間が5年を満たすこととなった日)を迎えた方が対象となります。それより前に60歳に達している方は現行の支給率から変更はありません。申請手続きは、原則事業主を経由して行う必要がありますので、従業員の方への説明を含め、企業側は理解をしておくようにしましょう。
参考:厚生労働省リーフレット001328827.pdf
2025年4月、改正法の施行がいくつか予定されています。今月はその中で雇用保険制度の改正により、育児に伴う給付として創設された「出生休業支援給付金」、「育児時短就業給付金」についてご紹介します。
1.出生後休業支援給付金
子の出生直後の一定期間内に、被扶養者とその配偶者がそれぞれ14日以上の育児休業を取得した場合、通常の育児休業に加え、賃金の13%相当額が上乗せされます。従来の育児休業給付の給付率67%と合わせると80%へ引き上がり、手取り10割相当の給付となります。
2.育児時短就業給付
2歳未満の子を養育する被保険者が時短勤務している場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を支給する制度です。
給付金の申請は事業主を通して行います。また、それぞれ支給要件もありますので事前の確認が必要です。多くの事業主や担当者に影響があると考えられますので、早めに準備を進めましょう。
「令和7年度税制改正大綱」で注目されるのは103万円の壁ですが、令和6年12月20日に公表されました。各省庁が税制改正要望案をまとめ財務省に提出するのは8月ですが、東京税理士会は3月に意見書をまとめ49項目の改正要望事項を挙げています。その中から印紙税の廃止要望を紹介します。
【その他国税に関する事項】 印紙税を廃止すること。(継続要望) |
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【意見及び理由】 印紙税は、経済取引について契約文書等を作成することにより、取引の当事者間において取引事実が明確となり法律関係が安定化される点に着目し、契約文書等の作成行為の背後に担税力を見出して課税する間接税に近い流通税であると説明されている。 しかし、契約文書等に担税力を見出す場合、契約書の作成が取引の成立要件になっている必要があり、かつ、その後の所得の発生に基因して所得課税等が行われる実状に鑑みれば、契約文書等がない取引に比して過重な負担を求めていることになる。 したがって、印紙税は、課税根拠としての十分な担税力を認識できないにもかかわらず課税をしているのであるから、廃止すべきである。 |
[引用]東京税理士会 令和7年度税制及び税務行政の改正に関する意見書
印紙税は、主に商取引にあたって発行する文書に対して課される税金です。身近な例では5万円以上100万円以下の領収書に200円の収入印紙を貼っているものがそれです。その他にも不動産売買や請負に関する契約書にも金額により印紙税が課されます。
そもそも印紙税は明治6(1873)年に西洋の制度を参考にして導入されました。目的は、江戸時代からの税負担が農業者に偏重し、商工業者には軽いという状況を改め、商工業者にも均一の税負担を課すことでした。現在では印紙税法で印紙税が課される文書20種類が定められており、極端な解釈では商取引において契約書が成り立つ⇒各種法律が整備されている(法律の恩恵を受けている)⇒担税力があるという名目のもと、印紙税が課されています。しかしながら、メールで送付した契約書やクレジットカード決済の領収書には印紙税が不要であり、印紙税の目的や公平性に疑問が残ります。
ちなみに令和5年度の印紙収入は1兆1,240億円(財務省の統計)。これには登録免許税(6,833億円:政府統計の総合窓口(e-Stat)より)の他に印紙で納付する各種手数料も含んでいるため印紙税による税収は最大4,400億円程度と推定されます。印紙税を廃止してほしいという国民の強い思いと廃止された場合の代替案がなければ減税は難しいのかもしれません。
●定額減税の対象者
年末調整における定額減税の対象者は、本人に加え同一生計配偶者、扶養親族が含まれます。まず年末調整の計算後に、定額減税の計算として対象となる本人、同一生計配偶者、扶養親族の人数分正しく減税されているか必ず確認をしましょう。
扶養の判定については、原則として令和6年12月31日の現況で判定することになりますので、令和6年12月に生まれた子についても定額減税の対象となります。例年ですと出産した子は16歳未満の扶養親族になるため、所得税の計算上金額に変動はなく、あまり気にする必要がありませんが、今年については定額減税により所得税の計算上金額に変動がでるため注意が必要です。経理の方は、あらかじめ可能性のある従業員を把握しておくと対応がスムーズになるかと思います。
●住宅ローン控除と定額減税
年末調整では住宅ローン控除をうけられる方もいるかと思います。住宅ローン控除は控除する金額も多額となり、所得によっては全額還付という場合も考えられます。定額減税と住宅ローン控除では、まず住宅ローン控除が先に計算がされますが、住宅ローン控除後の税額が0円もしくは定額減税の金額以下となった場合には、定額減税としての減税効果はなくなってしまうのでしょうか。
結論から言いますと、住宅ローン控除によって定額減税の減税効果はなくなることはありません。住宅ローン控除後の税額が、定額減税の金額を下回り、定額減税分控除しきれない場合については、源泉徴収票に控除しきれなかった金額が「控除外額」として記載され、令和7年に実施する不足額給付にて給付されるとされています。ですので、控除外額が発生する場合には正しく源泉徴収票に反映されているか確認をするようにしましょう。
定額減税に限らず、扶養の判定などでミスがあり、税額を少なく計算して年末調整をおこなってしまった場合は、忘れたころに税務署から指摘されてしまいます。後で痛い目を見ないためにも、まずは年末調整の書類を正しく提出するよう注意したいですね。