
春になり新たな従業員が入社したという企業も多いのではないでしょうか。入社した従業員が活躍していくのが理想ですが、病気等で働くことができなくなってしまう可能性も0ではありません。予防策としては、定期的に健康診断を受け、早期に治療をうけることが考えられます。今回は健康診断を税務的な観点からみていきたいと思います。
まず、前提として企業は従業員に対して健康診断を受けさせる法的な義務があります。また、従業員側にも健康診断を受診する義務があります。一般的なものとしては、定期健康診断として1年に1回の健康診断を受診することがあげられます。この費用については、原則会社負担となり福利厚生費として処理されます。一方で、定期健康診断に合わせて、法定項目以外のオプション検査を受けたい、せっかくなら人間ドックを受けたいとなった場合、どこまで会社側が費用負担しても問題ないのでしょうか。
例えば特定の従業員のみオプション検査の費用や人間ドックの費用負担を行うとした場合どうでしょう。健康診断の費用が福利厚生費として認められる大前提としては、全従業員に対して公平・一律に機会が提供されているかという点が重要です。特定の従業員だけが追加費用等を負担されている状態は、個人に対する経済的利益の供与として追加費用分については給与課税される可能性があります。そのため、追加費用等については個人負担にするか、もしくは対象検査をあらかじめ取り決め、全従業員を対象・〇〇歳以上の全従業員を対象といった一律の基準を設ける必要があります。
それでは、極端な話ですが全従業員を対象に数十万する高額な人間ドックを受けられるようにした場合はどうでしょうか。先ほどの話での公平・一律は満たしていますが、一般的に実施されている人間ドックの費用から乖離している場合に関しては、健康診断以外の目的が含まれているととらえられ、同じく給与課税される可能性があります。給与課税については、役員の場合損金不算入になってしまうことや、給与課税分の源泉徴収税額を考慮する必要がある等多方面で影響がでるため注意が必要です。
4月に協会けんぽから令和8年度の健康診断の案内がありましたが、今年度から35歳から74歳の方については人間ドックについても最高25,000円補助がでるようになりました。協会けんぽではなく、健康保険組合に加入されている企業については、組合での補助の要件がそれぞれあるかと思いますが、補助を活用しつつ全社員が健康状態を把握し、長く働きやすい環境を作るということも人手不足の世の中では重要な点かもしれませんね。
2026年4月より企業型確定拠出年金(企業型DC)制度が見直され、マッチング拠出の上限が撤廃されます。また、2026年12月には拠出限度額の引き上げもされ、加入者の利便性と資産保護を強化する改正内容が施行されます。
そもそも企業型DCとは、加入者自らが資産を運用して年金(運用益)を受け取る確定拠出年金の事をいいます。個人型確定拠出年金(通称「iDeCo」)の様に、加入者自身がコツコツお金を積み立て運用するのではなく、毎月一定の掛金を企業が積み立て、加入者(従業員)が運用する企業年金制度になります。掛金の積み立ては企業(事業主)が行いますが、運用の責任は加入者が負う仕組みとなっており、加入者は自身で商品を選び運用をしていきます。また、会社が拠出する掛金に加えて、加入者本人が掛金を上乗せして拠出できる仕組みがあり、これを「マッチング拠出」といいます。加入者が拠出する掛金は「小規模企業共済等掛金控除」となり、所得控除の対象となるため、税制優遇を受けながら老後資金に備えることが可能となります。しかし、「マッチング拠出」については今まであまり利用されていないのが実情です。
厚労省の確定拠出年金統計資料によると、企業型DCの加入者は2025年3月末で862万人、うち414万人の勤務先はマッチング制度はありますが、活用者は140万人ほどです。理由としては、加入者が拠出できる掛金額は事業主掛金の額を超えられないという制限が設けられていたためです。確定拠出年金法に定められた拠出限度額は月額55,000円の範囲内と決められていますが、仮に会社の掛金が10,000円だった場合、マッチング拠出の上限も10,000円となり、残りの35,000円の枠は無駄になってしまっていました。4月からはこの「事業主掛金の額を超えられない」という制限が撤廃されるため、上記の例だと最大45,000円のマッチング拠出が可能となります。さらに、2026年12月からは全体の枠が55,000円から62,000円に広がるため、運用の幅が広がります。(確定給付企業年金を併用している場合、掛金額が変わってきます)なお、当制度はiDeCoとの併用はできないため、iDeCo加入中に勤務先がマッチング拠出を取り入れている場合、そのままiDeCoを続けるか切り替えるかの選択が必要となります。運用商品の選択肢や自由度、コスト負担者など各々メリット・デメリットがあるので、切り替える場合にはよく考えるようにしましょう。

令和7年12月19日に発表された令和8年度税制大綱により、令和9年1月1日以降に相続等によって取得する貸付用不動産等の評価方法が変更となる見込みとなっております。以下がその概要です。
◇貸付用不動産の財産評価
被相続人(亡くなった方)が課税時期(原則として亡くなった日)前5年以内に購入または新築をした一定の貸付用不動産については、従来の路線価を用いた評価から、課税時期における通常の取引価額に相当する金額(原則として、取得価額を基に地価変動を考慮した金額の80%相当額)での評価に変更されます。この改正により、従来と比較して財産評価額が高くなる場合が多くなるため、結果として相続税の納税額が増える可能性があります。
ただし、令和9年1月1日以降に相続等により取得をした場合であっても、この改正を通達に定める日までに、被相続人が5年前から所有していた土地に新築をした家屋には適用されません。
◇不動産小口化商品の財産評価
主に投資商品として小口化された貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額(原則として、事業者等が示した適正な処分価格等を参酌した評価額)により評価されることとなりました。この改正についても、上記の貸付用不動産と同様に従来の路線価を用いた計算方法よりも財産評価額及び相続税額のどちらも増加する可能性があります。
また、上記の貸付用不動産が課税時期前5年以内という要件付きだったのに対し、投資としての性格が強い不動産小口化商品についてはその要件がないため、より厳格化されたといえます。
今回の改正は貸付用不動産の評価方法が実際の取引価額と異なることを利用して相続税を減額させるケースが問題視されたことにより実施されることとなりました。 どちらの改正も財産評価額を増額させる改正となっておりますので、相続税の申告の時になって「想定外の納税になってしまった」とならないよう注意が必要です。

2026年も様々な制度改正が予定されています。今回はその中から3月・4月に変更となる主なポイントをピックアップしました。すでに準備はお済でしょうか?
■JR東日本 運賃値上げ(2026年3月14日から)
JR東日本では2026年3月14日から運賃の値上げを実施します。幹線の運賃は4.4%、通勤定期は7.2%の値上げとなります。また、これまで他エリアよりも安価に設定されていた「電車特定区間・山手線内」の運賃区分は廃止され、幹線に統合されます。例えば、東京駅から渋谷駅まで山手線を利用した場合、現在は210円ですが、3月14日以降は260円となります。改定は3月14日購入分から適用されますので、3月14日以降に乗車する場合でも13日までに購入した乗車券や定期券については改定前の運賃が適用されます。出張の予定や定期券の期限を早めに確認しておくと良いでしょう。
■「130万円の壁」被扶養者判定の変更(2026年4月から)
社会保険の加入の収入基準がこれまでの「今後1年間の収入の見込み」ではなく、「労働契約上の計算した年間収入」によって判断される仕組みに見直されます。契約時点では予測できない残業代は年収見込みに含めないため、通常の勤務条件のみで130万円未満であれば、一時的な残業が発生しても扶養から外れにくくなります。このため、より柔軟な働き方が可能になると期待されています。一方で企業側は労働条件や賃金条件の明確化が今までよりも重要となるため、雇用契約書や労働条件通知書の記載内容の見直しが必要になる場合もあります。
■子ども・子育て支援金(2026年4月から)
子どもや子育て世帯への支援を社会全体で支えるための新しい仕組みとして、医療保険の被保険者の保険料に上乗せする形で、高齢者を含む全ての世代や企業から支援金を徴収し、その財源を使って子育て支援策を拡充する制度が始まります。健保組合の場合、2026年4月の社会保険料から徴収され、標準報酬月額×0.23%で計算される支援金を企業と被保険者で折半して負担します。年収600万円の場合、被保険者一人当たり月額およそ575円になります。支援を受けられるのは子育て世帯に限られるため「独身税」と批判的にも呼ばれてもいます。
■在職老齢年金の支給停止基準額の引き上げ(2026年4月から)
在職老齢年金は賃金と年金の合計額が月51万円を超えると、超えた分の半額が支給停止となりますが、厚生年金が支給停止となる基準額が月62万円へと引上げられます。人手不足が深刻化する中で、高齢者の活躍はますます重要性を増しています。今回の見直しは、働く意欲のある高齢者が年金を受給しながら働きやすい環境を整えることを目的としたものであり、高齢者の就労を後押しする制度改正と言えます。
令和7年12月19日に令和8年度税制大綱が発表されました。今回の改正ではインフレ対応、中小企業や低所得者~中間層向けの対策が多く盛り込まれましたのでいくつか紹介します。
■年収の壁
給与所得者の年収の壁が178万円に引き上げられます。これは令和5年10月から令和7年10月までの2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率6.0%を踏まえたものとされています。改正に伴う給与計算への影響は令和8年末の年末調整で行います。
■食事支給の非課税限度額(現行:月額3,500円)
役員や使用人に支給する食事について、役員や使用人の負担額の上限を月額7,500円に引き上げられます。約40年ぶりの引き上げです。
■少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(現行:30万円未満、常時使用する従業員の数が500人以下)
令和8年3月31日までとされていた特例ですが、3年の期限延長だけでなく対象となる減価償却資産の取得価額が40万円未満に引き上げられます。ただし、対象となる常時使用する従業員の数が400人を超える法人は除外されます。
■こどもNISA(いわゆるジュニアNISAの復活)
口座を開設する年の1月1日時点で18歳以上とする年齢制限を撤廃し、親や祖父母が子の教育資金等に活用できるようになります。上限は年間60万円、合計額600万円です。払い出しは原則として18歳になるまで制限されますが、子が12歳以降であれば、進学や教育資金、生活費などの特定の事由があり、かつ子の同意がある場合には、非課税で可能です。
この他にも住宅ローン控除、インボイス関連、中小企業向けの賃上げ促進税制等で期限の延長や拡充が図られる一方、大企業向けの賃上げ促進税制は廃止、株式譲渡益などの金融所得が多い超富裕層へは課税強化されます。気になる点がありましたら監査担当までお問い合わせください。

気づいたらあっという間に寒くなってしまい、12月になってしまいました。寒くなってしまうと体調を崩してしまうことも多いかと思いますが、今回は法人契約の医療保険と見舞金についてふれていきたいと思います。
法人契約の医療保険は、被保険者を代表・役員の方にして加入するパターンが多いかと思います。掛け捨ての法人契約の医療保険の場合、保険料の支払いは法人から行われ、法人の経費となります。契約後、被保険者である代表者が入院する等で、保険金が支払われるとなった場合、法人に保険金が入金され、この入金額は法人としての利益となります。医療費に関するお金の支払いは個人が支払いますので、法人にはお金が入るが、個人にはお金が入らず、支払いが発生するということになります。そのため多くの方は、法人に入金された保険金を、個人に渡せないかと考えます。その際に見舞金を活用しようとしますが、見舞金とはどのようなものでしょうか。見舞金について整理したいと思います。
見舞金は、法人から個人に支給されますが、慶弔見舞金規定等の社内規定として定め、支給をされることが一般的です。支給された金額は社会通念上相当と認められる額であれば、支払った法人では福利厚生費等の経費となり、受け取った個人は非課税として受け取ることができます。それでは社会通念上相当と認められる額とはどれくらいなのでしょうか。例えば100万円の保険金が法人に入金され、個人では入院手術代等の医療費で50万円支払っていたような場合、見舞金として個人が負担している50万円を補填するような形で、見舞金50万円というのは可能なのでしょうか。参考となる見舞金に関する過去の裁決事例として、平成14年6月13日 国税不服審判所では入院1回につき5万円を相当な額としています。これは訴えを起こした企業の類似企業における規定額、支給実績から導きだされた金額となります。この事例では見舞金を取締役会長に支払った事例になりますが、5万円を超えた部分については、すべて役員に対する賞与とされてしまいました。役員の賞与となると、法人の支払った金額は損金不算入となり、また源泉所得税の徴収が漏れているとペナルティを受け、受け取った個人では受け取った金額分課税されるという三重苦となってしまいますので注意が必要です。
そもそもではありますが、法人契約の医療保険は個人の医療費負担をサポートするものではありません。医療費の支払いが個人で発生することを考えると、医療保険は本来個人として入るべきものと考えられます。改めて個人と法人は別物として考えることを意識してみてください。