事務所通信別冊

2020年12月号  実は確定申告が必要かも・・日常生活の収入

 

あっという間に12月となり今年も残すところ1か月です。来年になるとすぐに確定申告の時期がやってきます。確定申告なんて縁がないと思っている方も、場合によっては確定申告が必要になるものを紹介したいと思います。

①メルカリなどのフリマアプリでの売却収入

 洋服や生活用品等の不要品を売却した収入は、非課税となるため基本的に課税されません。ただし、130万円以上の貴金属・美術品等の売買により利益が出た場合は譲渡所得として課税対象となります。また、近年問題になっている面もありますが、転売を継続的に行っている場合は事業所得や雑所得として捉えられる場合もあります。

②懸賞での賞品,賞金等

 懸賞に応募して賞品や賞金が当たった場合は、その賞品や賞金が一時所得として課税対象になります。賞品とは違いますが、ふるさと納税の返礼品も同じ一時所得として扱われます。

③競馬

 競馬などのギャンブルでの儲けも基本的には一時所得として課税対象となります。この場合注意が必要なのは負けた分のお金は費用にはならないということです。例えば、100円の馬券を1,000枚購入し(10万円の支出)、そのうちの1枚の馬券が10万円の当たり馬券になったとします。この場合、10万円支払って10万円戻ってきたので利益はないように見えますが、一時所得の計算上は収入10万円に対し、当たり馬券の購入価格100円を引いた金額を所得と考えます。

 

上記の説明を見て、今まで確定申告なんてしてませんけど?と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。上記で紹介した内の譲渡所得・一時所得については、計算上50万円をその所得から控除することができる特別控除という考え方があるため、50万円以上の所得がでていないような少額の場合は、確定申告は必要がありませんのでご安心ください。

また、②の賞金には宝くじが含まれるようにも思われますが、宝くじは非課税として扱われます。これから年末ジャンボ宝くじで10億円当てようと税金はかかりませんので、買われる方は当てて2020年を締めくくれるといいですね。

2020年11月号  定年がなくなる日 ~70歳定年法~

 先日、日本郵便の正社員と契約社員の待遇格差の是非が争われた訴訟の審判決があり、双方には「不合理な格差」があると判断がされました。

 20214月には中小企業にも同一労働同一賃金が施工されますが、同施工日には、企業に対して70歳までの就業機会の確保を努力義務とする「改正高年齢者雇用安定法」(通称・70歳定年法)が施工されます。

現行制度では、全事業主に65歳までの定年引上げ 65歳までの継続雇用制度の導入 ③定年廃止のうち、いずれかを義務付けており、2025年には経過措置が終わります。社会の実態は、本人が希望すれば65歳までは働けるとはいうものの、60歳で一度定年退職し、その後は契約社員などとして継続雇用する仕組みの企業が約8割を占めています。しかし、定年再雇用時の賃金減額について、今までの裁判では容認傾向でしたが、今後の改正によりシニアの働き方の意識は変わってくるでしょう。高年齢者の同一労働同一賃金についても、より一層厳格な判断が下される可能性も否定できません。

70歳定年法は、①~③の現行制度の年齢が5歳上にスライドされ、また新たに、④高年齢者の希望により企業との業務委託契約の締結制度 ⑤事業主自ら、又は委託、出資などをする団体が実施する社会貢献事業に従事できる制度が加わりました。努力義務であるため、直ちに取り組む必要はないものの、2025年に65歳定年制が完全義務化されると、70歳定年法も義務化の方向に社会は動いていくかもしれません。企業側のメリットとしては、労働力の確保や知識・技能の承継があげられます。その反面、人件費が増加するため人事制度や退職金制度の見直しを迫られ、また人材の若返りが図れないことが課題となっております。従業員側は、年金受給の繰り下げの選択肢が増えますが、職場での役職や立場が逆転する、上がつかえるなどの面もあります。

人材不足の解消や社会保障制度の維持のためには、高齢者も今以上に長く働かなければならない時代になりました。今年は「熟年離婚」の前倒し版「コロナ離婚」という言葉も新たに出来ましたが、夫婦関係を良好な状態に保つためには、適度な距離感が必要なのかもしれません。「労働期間の延長」という言葉だけ聞くと、気持ちが暗くなるかもしれませんが、「良好な夫婦関係を継続する」「社会との関わり合いが長くなる」とポジティブに考えてみてはいかがでしょうか。

                   (参考文献:週刊東洋経済)