さっそくですが、パートナーシップ構築宣言というものをご存じでしょうか。パートナーシップ構築宣言とは昨年2020年から開始された取り組みで、取引先とのパートナーシップを強化するなど新たな共存共栄関係の構築を企業の代表者名で宣言するものです。大きくわけて下記の2点について取り組むことを宣言することとなります。
①サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携
②振興基準の遵守
②の振興基準の遵守とは、親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく振興基準)を遵守し、取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商習慣の是正に積極的に取り組むことを意味します。もう少し具体的に言うと、価格の決定方法や支払条件等において下請事業者側が不利にならないよう取り組むことを指します。このように聞くとパートナーシップ構築宣言は大企業のみが対象かと思われるかもしれませんが、あらゆる規模・業種の企業及び個人事業主が対象となっています。宣言をすることでのメリットは3点あげられます。
【メリット1】取引先との共存共栄の関係を築こうとする会社(ホワイト企業)であることをアピール
宣言した内容は公式ポータルサイトにも掲載され、宣言をした企業はパートナーシップ構築宣言のロゴマークを使用することができます。
【メリット2】一部の補助金で加点措置
事業再構築補助金、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金などで加点措置を受けることができます。
【メリット3】宣言の取り組みを実践することでSDGsも同時達成することに
企業活動として社会的にも求められているSDGsに対して、宣言をすることで取り組んでいることになります。
2021年11月の時点では約3,800社が宣言をし登録されていますが、資本金が3億円を超える企業の登録は約390社と多くはありません。結局のところ中小企業の取引先である大企業が宣言し、取り組まなければ中小企業としては苦しいままです。中小企業が積極的に取り組み、大企業に対してパートナーシップ構築宣言に取り組んでいないことが変だと感じさせることが今後必要になってくるかもしれません。まずは自社が取り組むことができるか検討してみてはいかがでしょうか。
急に肌寒い日が多くなり、今年もわずか残り2ヶ月となりました。12月に入れば、毎年経理の皆様が苦労されている年末調整業務がやってきますね。年が明けると、私たち税理士にとっては繁忙期にあたる確定申告の時期が近づいてきます。今回は、そんな確定申告のお話をしたいと思います。
先月の10月11日にプロ野球ドラフト会議が行われました。野球に関心がある方は、年に1度のイベントだったのではないでしょうか。ドラフト会議後に、いざ入団となりますと「契約金」が球団から支払われることになります。選手によっては億単位の契約金が支払われることもあります。では、この契約金は何所得になるのでしょうか。よく給与所得と勘違いする方がいらっしゃいますが、野球選手は個人事業主扱いとなりますので、事業所得に該当し確定申告の対象となります。日本の所得税率は、所得が大きければ大きいほど税率が高くなり、税額が大きくなる仕組みです。例えば、契約金が1億円でその他の収入・経費がなかったものとします。その場合、所得税法の最高税率45%が適用され、所得税額は4,500万円となります。1億円もらったとしても約半分が税金として持っていかれてしまいます。そこで、所得税法では急激な変化が起きた時に税額が極端にならないように調整する「平均課税制度」というものがあります。平均課税制度を使って税額計算をした場合、一般的な方法により計算した所得税額より減額が見込まれます。しかし、この平均課税制度、何でもかんでも適用が出来るわけではありません。「変動所得」と「臨時所得」に該当するものが対象となります。
【変動所得】・・・事業所得や雑所得のうち、下記に該当するもので年々の変動の著しい所得を言います。
①漁獲やのりの採取による所得、はまち・まだい・ひらめ・かき・うなぎ・ほたて貝・真珠・真珠貝の養殖による所得
②著作権の使用料による所得
③原稿料、作曲料の報酬
【臨時所得】・・・簡単にいうと下記のようなものになります。
①3年以上の期間、プロ野球選手のように、一定の者に専属して役務の提供を約すること等により一時に受ける契約金で、その金額がその契約による報酬の年額の2倍相当額以上であるものに係る所得
②3年以上の期間、他人に不動産等を使用させることを約することにより一時に受ける権利金等の対価で、これらの資産の使用料年額の2倍以上であるものに係る所得 etc...
プロ野球選手の契約金は臨時所得に該当します。また、上記の変動所得や臨時所得に該当するものすべてが対象になるわけではなく、そこからさらに一定の要件を満たしたものが、「平均課税制度」の対象となります。計算方法は難しいお話になりますので割愛させていただきますが、ご興味のある方はインターネットで検索してみてください。
毎年、税制改正要望が出され、税法はどんどん変わっていきます。法律は時代変化に合わせて変わっていくものですが、私たちに身近な「住民税」に関連して、すでに導入が決定している「森林環境税」についてご存じでしょうか?
「森林環境税」とは令和6年度から国内に住所のある個人に対して課税される国税であり、市町村において、個人住民税均等割と併せて1人年額1,000円が徴収されます。年間620億円の税収を見込んでおり、その税収の全額が、国によって「森林環境譲与税」として都道府県・市町村へ譲与されます。
都道府県・市町村は「森林環境譲与税」の使い道を公表しなければなりません。ちなみに神奈川県が公表している『森林環境譲与税に関する使途』によると、令和元年度は森林環境譲与税約97百万円のうち、約52百万円(約53.7%)は使われずに基金に積立されたようです。また、自治体によって名称は異なりますが、37の府県と横浜市では、既に独自の森林環境税が導入され、徴収されています。令和6年度から国税の「森林環境税」の徴収が始まると、国と県で二重課税になってしまうのは少し気になりますね。
最後になりますが、結局は増税か?と思われたかもしれませんが、東日本大震災の復興対策として年間1,000円住民税に上乗せされていたもの(2014年から10年間)が終了する予定ですので、住民税が増えるということにはならないので安心してください。
(参考 総務省ホームページ)
新型コロナウイルスの感染拡大長期化、自宅療養者の増加に伴い、濃厚接触者と判断される人も増えてきています。濃厚接触者に該当すると保健所の指示に従ってPCR検査を受け、検査結果にかかわらず14日間の健康観察が指示されます。健康観察期間は、不要不急の外出や通勤通学を控えることになっています。もし従業員が濃厚接触者になって仕事を休んだら、休業補償はどのようになるのでしょうか? 新型コロナの濃厚接触者に関する休業補償について調べてみたところ、濃厚接触者の健康観察期間の自宅待機は要請であるため、個別の状況や会社の就業規則などにより判断がわかれるそうです。
会社側から、濃厚接触者になったことを理由に休むよう指示された場合には、給料または休業手当を受け取れるのが、基本的な考え方です。例えば、コロナの症状がなく仕事ができる状態で、パソコンや通信環境などを整えてもらえば自宅でも仕事ができるものの、会社側の都合で在宅勤務が認められないケースや、他の従業員に感染させないための安全配慮の観点から休業を指示するケースが該当します。また「37.5度以上の発熱があったら休業すること」「咳が出ているときは休業すること」など、一定の症状を理由に会社側が定めた制度で休業を命じた場合も、原則として「使用者の責」による休業にあたります。この場合も、休業手当の対象になります。
一方で、従業員の判断で仕事を休む場合には、休業手当の対象にはなりません。風邪で休むのと同じように、自己都合での欠勤として扱われます。当然、年次有給休暇を利用する方法もあります。発熱がある、咳がでている、頭痛がするなどの症状があれば、被用者保険に加入されている方であれば、体調不良(※)で4日以上連続した休業した場合、各保険者から傷病手当金が支給されます。これは新型コロナに限らず病気やケガで仕事を休んだときに、おおよその給料(標準報酬月額)の3分の2相当の金額を、日割りで受け取れる制度です。 (※補足:無症状でもPCR検査で陽性判定の場合は傷病手当金の対象になります。)
あくまで健康観察期間は、保健所からの要請ではありますが、会社側も感染の可能性のある従業員を出社させるわけにもいきません。厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A」を参考に、会社での方針を決めておくとよいでしょう。また、同居家族が新型コロナ感染者となり自宅療養となったケースでは、濃厚接触者の健康観察期間が長期になることもあります。急な休業に備えた業務の見直しや体制づくりを行いましょう。
参考:日本渡航医学会と日本産業衛生学会の共同文書「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」
オリンピックが開幕されたとはいえコロナウイルスの影響はいまだ大きく、東京都では緊急事態宣言が発令されており、中々通常の生活が取り戻せない日々が続いていますが、そんな中で事業者側からすると負担が増加する案が決定されましたがご存じでしょうか。
7月14日に厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会において、2021年度の最低賃金を全国平均で28円を目安に引き上げ、時給930円とすることが決定されました。(現在の全国平均は902円)最低賃金については、16年度~19年度では3%ずつ引き上げ、昨年20年度についてはコロナウイルスの影響もあり結果としては0.1%増と微増となっていました。しかし今回は3.1%増と過去最大の上げ幅となりました。今回の決定をもとに各都道府県が最終的に最低賃金の金額を決定するため、まだ最低賃金の引き上げ金額が確定したわけではありませんが、例えば東京都及び隣接する県は目標の28円引き上げられると以下のように変化することとなります。
現 在 | 増加後 | |
埼玉県 | 928円 | 956円 |
千葉県 | 925円 | 953円 |
東京都 | 1,013円 | 1,041円 |
神奈川県 | 1,012円 | 1,040円 |
最低賃金は企業が労働者に支払わなければいけない最低限の時給であり、違反企業には最低賃金法の50万円以下の罰則等が科される可能性があります。今回の最低賃金の変更は10月ごろから適用されるため、現状最低賃金ギリギリの金額設定になっている場合は注意が必要です。また、政府の政策として「全国加重平均1,000円」をあげていることからも、今後も継続して最低賃金の引き上げがあることを見越して対応を検討する必要があるでしょう。
支払う給与等の金額が増えることは企業にとっては負担が増えることになりますが、要件を満たせば所得拡大促進税制によって税額控除をうけることができるなどの面もあります。今回の最低賃金引き上げに合わせて、中長期的な目線で自社の賃上げについてどのように対応していくのか検討してみてはいかがでしょうか。
今年の6月に一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が可決、成立しました。現行の窓口負担割合は、以下のようになっています。
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今回、改正が加わる部分は、75歳以上の方の負担割合です。単身の場合、年収が383万円未満の方の窓口負担割合は、一律1割でしたが、ここで新たに基準を1つ設けることになりました。年金を含む年収が200万円以上(単身世帯)の方については、窓口負担割合が1割から2割に引き上げられます。厚生労働省の試算によると、2割負担となる対象者は約370万人とされ、現役世代の負担が大幅に減少されると見込んでいるようです。引き上げ時期は、2022年度後半を予定しています。人口の多い団塊の世代が後期高齢者になり始める2022年以降、医療費が急増すると見込まれ、財源を賄う現役世代の保険料負担を抑えるのが狙いです。なお、引き上げ後3年間は、窓口で払う増加額が月最大3,000円となるように激変緩和措置が設けられます。
また、関連法案では、国民健康保険に加入する未就学児の保険料軽減措置や、育児休業中の社会保険料免除対象の拡充なども盛り込まれました。
自営業者など国民健康保険に加入する家庭の小学校入学前の子どもの保険料について、半額にすることを決めました。一般の会社員が加入する健康保険では、扶養する子どもの保険料はかかりませんが、国保は年齢に関係なく子どもを含め全員が保険料負担の対象となります。金額は居住する市町村によって異なりますが、子どもの保険料も年間で数万円程度かかります。
育児休業中の社会保険料については、一定の手続きをすれば保険料の免除が受けられます。今までは、月末時点で育児休業を取得している場合には、当月分の保険料が免除される一方、月途中に短期間の育児休業を取得した場合には保険料が免除されないという不公平が生じていました。そこで、取得のタイミングによらず月内に2週間以上の育児休業を取得した場合にも、当該月の保険料を免除することが出来るように見直しがされました。
おおまかな改正点としては、以上になりますが、改正懸念事項として、窓口負担増により高齢者の受診控えがあげられているようです。私としては、市販薬の使用が増え、処方薬の飲み残し問題が改善するきっかけになってくれればいいなと思っています。
毎年、税制改正要望が出され、税法はどんどん変わっていきます。法律は時代変化に合わせて変わっていくものですが、私たちに身近な「住民税」に関連して、すでに導入が決定している「森林環境税」についてご存じでしょうか?
「森林環境税」とは令和6年度から国内に住所のある個人に対して課税される国税であり、市町村において、個人住民税均等割と併せて1人年額1,000円が徴収されます。年間620億円の税収を見込んでおり、その税収の全額が、国によって「森林環境譲与税」として都道府県・市町村へ譲与されます。
今年9月にデジタル庁を創設することなどを盛り込んだ「デジタル改革関連法」が参議院本会議で可決・成立しました。これにより、マイナンバーカードと健康保険証、運転免許証との一体化など、誰もがデジタル化の恩恵を受けることのできる社会となっていくと思われます。
年末調整についてもデジタル化が進んでいます。年末調整で保険料控除を受ける場合、「PXまいポータル」をご利用の関与先様については、従業員は保険会社から郵送された書面(保険料控除証明書)をもとにパソコンやスマホから保険料等を入力します。従業員は保険料控除申告書を紙で提出しないので、企業としては紙で保管する必要がありません。今後はさらにマイナンバーカード・マイナポータルを利用して、複数の保険会社の証明書等のデータを一括取得できるようになります。従業員としては書面から保険料等を入力する必要もなく、企業としては書面も保管する必要がなくなります。(下図参照)
現時点ではすべての控除証明書等がマイナポータル連携できるわけではありませんが、国税庁のホームページにマイナポータル連携が可能な控除証明書等発行主体の一覧が公開されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/list.htm
すでにマイナポータルにより、子育て・介護をはじめとする行政手続きの検索やオンライン申請や、日本年金機構のねんきんネットとの連携ができるようになっています。まだマイナンバーカードをお持ちでない方は早めに取得し、さらに進むデジタル化を有効に活用していきましょう。
4月22日に健康保険組合連合会(健保連)より健康保険組合の8割近くが令和3年度の収支予算で赤字を見込んでいると発表されました。新聞記事によると新型コロナの影響によって、健康保険料の財源が十分に確保できなくなり令和3年度は全体で6700億円、令和4年度は9400億円の赤字になる見込みのようです。健康保険組合の平均の保険料率は平成20年のリーマン・ショック後で見ると、平成21年度の7・45%から上昇傾向で、今回の令和3年度予算では9・23%と過去最高を記録しました。急激な負担増を避けるため、積み立てた貯金を取り崩してしのぐ組合もあるようですが、料率を引き上げる組合が今後増える可能性があります。
また、加入事業所の約8割が中小企業である協会けんぽも赤字構造が続いており健康保険料は上がり続けています。昭和22年度に3.6%だった保険料は令和3年度には健康保険料10%に加えて介護保険料が1.80%になりました。
保険料率だけではなく、今後短時間労働者への社会保険適用拡大も決まっており従業員を雇用する企業にとって社会保険料の負担増加は避けられなくなってきています。
(参考:社会保険適用拡大の変更点)
被保険者の意識改革も必要
健康保険料等の社会保険料の計算の基礎となる標準報酬月額は、4月から6月の給与(手当等を含む)をもとに計算します。4月から6月の残業(残業手当)が大きく影響します。そのため、従業員からすると、定時改定での保険料の増減は気にしても、3月分から保険料率が上昇していることには気づきにくいものかもしれません。
おそらく、今回コロナによる緊急事態宣言の影響で4月から6月の給与や残業が減るなど報酬低下の影響もあって、等級が下がる被保険者が多くなることが予測されます。中には「今年は、保険料の負担が減る。」と考える方もいるかもしれません。しかし、社会保険のしくみを理解し、これまで以上に私たち一人一人の医療費が増加しないように健康維持や適切な医療機関へのかかり方、ジェネリック医薬品を利用するなど取り組まなくては、将来的な負担は増え続けてしまうと意識しなくてはいけません。
昨今DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を目にする又は聞くことが増えました。2018年の経済産業省が発表したDXレポートでも、DXが実現できない場合2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)を上げており、DXを推進するために税制改正の検討も進んでおります。今回はそもそもDXって何?という点とDXに絡んだ税制改正についてふれたいと思います。
冒頭でもふれましたがDXとは、デジタルトランスフォーメーションの略です。英語にすると、Digital TransformationなのでDTでは?と思うかもしれませんが、TransをXと略すことがあることからDXとなっています。そもそもは2004年にスウェーデンのウメオ大学の教授によって提唱された概念です。その中でのDXとは「進化し続けるテクノロジーを活用することで、人々の生活を豊かにし変革すること」というもの。つまり、DXが実現できないということは、「革新的なテクノロジーが生まれない」「革新的なテクノロジーを活用できない」という状態を指すと考えられます。そのような状態で2025年を迎えた場合に、日本は世界からおいていかれることが想定され、DXを進めないといけないと話題になっているのが現状です。
ここからは税制の話になります。DXが何か、DXを進めないといけないということは理解いただけたかと思います。日本政府としても、各企業にDXを進め世界に対して競争力をつけてほしいという思いがあるので、DXを進めた企業に対しては税制優遇する方針となっています。新設が予定されている制度として、DX投資促進税制があげられます。以下の点をまずおさえておきましょう。
①全社レベルのDXにむけた計画に対して認定が必要
②対象設備にソフトウェア、器具備品、機械装置に加えて繰延資産(クラウドシステムへの移行に係る初期費用)が含まれる
③設備への投資上限は300億円、投資下限は売上高比0.1%以上
④投資額に対し、税額控除(5%/3%)又は特別償却30%の適用をうけることができる
注意点として、DX投資促進税制という名前から、関係する設備投資はDX投資促進税制をうければいいととらえてしまうかもしれませんが、中小企業の場合は既存の中小企業経営強化税制など他の制度を利用したほうが有利な場合も考えられます。設備投資の検討の段階からご相談ください。
中小企業庁は、新型コロナウイルス感染症の経済対策の一環で「事業再構築促進事業」として、一定の要件を満たす中小企業・中堅企業に補助金の交付を始めます。この事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響により売上が減少した中小企業・中堅企業などを対象に、新規事業の展開や業務転換を支援するための補助金です。令和3年3月に公募が開始される予定で、1兆1,485億円が確保されております。以前給付されていた持続化給付金と違い、今回の補助金は新たな取り組みを行う企業を対象にしたものです。また、持続化給付金は不正受給が頻発していましたが、今回の交付は「補助金」となりますので、計画書の提出や何に支出したかの経費費目までを審査・管理されることにもなるでしょう。
さて具体的に、補助金の対象となるケースですが、経済産業省のリーフレットに掲載されていた例として、
◇小売業◇
衣服販売業が、衣料品のネット販売やサブスクリプション形式の事業に業態を転換
◇食品製造業◇
和菓子製造・販売業が、和菓子の製造過程で生成される成分を活用し、新たに化粧品の製造・販売を開始
といったものがあります。業種の指定はありませんが、いずれにしても、コロナ禍に対応する製品やサービスの変革がキーポイントになるようです。
適用を受けるためには、共通要件3つを満たす必要があります。①任意の3ヶ月(申請前直近6ヶ月から選択)の合計売上高が、新型コロナ以前の同期比で10%以上減少②認定経営革新等支援機関や金融機関と共同で事業計画を策定③補助事業終了後3~5年で、又は、従業員一人当たりの、付加価値額の年率平均3.0(一部5.0)%以上増加の達成。この要件は通常枠の補助金を受ける場合であり、別途違う枠の補助金を受ける場合には、別に個別要件を満たす必要があります。
なお、申請受付は電子のみを予定しており、具体的には経産省開発の補助金電子申請システム(jGrants)で受け付ける事にしており、jGrantsの利用にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要になります。取得には2週間以上の時間を要するため、補助金の申請を受ける場合には、早めのお手続きをお勧めします。
2回目の緊急事態宣言下でのテレワーク実施率は全国で22%にとどまるというが、テレワークをしている従業員にとっては自宅で仕事をするにあたり、通信費や水道光熱費が増加しているのではないだろうか。
会社から従業員へ支給するテレワークに伴う経費についての手当は、従業員が実際に支出した業務のための実費相当分に支給されるものであれば所得税の課税は生じない。実際に支出した費用でも、会社が『一律に定額』を支給する場合などは、住居手当などと同様に給与所得として所得税の課税対象になる。
国税庁は15日、新型コロナウイルス禍で広がるテレワーク拡大に対応した課税指針を公表した。
会社が従業員に通信費を補助する際、半額は所得税の課税対象にしないと明示。電気料金も業務で使った自宅の部屋の床面積などを考慮し、一定額を非課税とする。
従業員が在宅で私用の通信機器を使ったり電力を消費したりする場合、どこまでが仕事用なのか判別しにくい。指針は非課税額を算出する計算式を示し、補助が非課税となる「実費相当」の水準を明確にした。
経理担当としては、この指針通りに毎月従業員別に管理するのは大変手間がかかると思われるが、指針とは別に企業が独自に非課税分を精緻に算出するのも認めるとのことなので柔軟に対応してはいかがだろうか。
在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
(参考 日本経済新聞、国税庁)
2020年は新型コロナウイルスにより、企業も様々な対応を迫られた年でした。その中で、普及したものとしてテレワークやオンライン会議があります。しかし、押印が必要な書類があり、そのためだけに出社するといったケースもあったようです。その為、「脱ハンコ」を目的とした「電子サイン」を導入する企業が増加したそうです。
この度、弊社でも12月よりAdobeSignを導入し電子サインの利用を開始いたしました。これまでは契約書に代表者様の押印を頂くか法務局の商業登記電子証明書やマイナンバーカードによる電子署名を頂いていました。電子サインは電子証明書による電子署名より導入しやすく手間がかからないといったメリットがあります。まず電子署名と何が違うのか比較してみましょう。(下表参照)
<電子署名と電子サインのちがい>
種類 | 本人性の担保 | 導入のしやすさ | 法的効力(証拠力) |
---|---|---|---|
電子署名 | ・電子証明書による電子署名 +タイムスタンプ ・電子証明書を発行する第三者機関による証明 | ・契約当事者が電子証明書を取得する手間がある | ・高い |
電子サイン | ・メールによる本人確認 +タイムスタンプ | ・手間や負担が少なく導入しやすい。 (オンラインでのやり取りなので、時間や場所の拘束がない) | ・電子署名よりは低い |
<電子契約手続きの流れ>(例:AdobeSignを利用し契約書を取り交わす場合)
①依頼者からAdobeSign経由で署名者宛に契約書の確認および署名の依頼メールを送ります。(複数者間の契約の場合、複数人に送信できます。)
②メール受信者(署名者)がメール内の署名用URLより契約書(PDFファイル)を開き、署名(手書きまたは入力)をします。
③署名が完了すると署名済みPDFファイルはオンライン上で保管、依頼者、署名者それぞれに通知されダウンロードできます。(※署名済みPDFファイルは保護され改ざんすることはできません。)
一連の契約手続きはオンライン上で完結するため、紙で印刷し製本する手間、取引先に出向いたり郵送にかかるコストが減ります。さらに取引先や顧客との契約書だけでなく、社内の保管書類に活用することも可能です。例えば、入社時に従業員と取り交わす雇用契約書・身元保証書・個人情報取り扱いの同意書等の入社書類は、相手が個人でかつ社内書類のため、比較的導入しやすのではないでしょうか。 社内でもハンコによる無駄な業務がないか一度見直してみましょう。