事務所通信別冊 2022

2022年12月号 キャッシュレス化によって現金は不要になる?

毎月、「0」が付く日は何の記念日かご存じでしょうか?「現金ゼロ(0)=キャッシュレス」で現金を使わないという意味から、毎月10日、20日、30日は「キャッシュレスの日」と制定されています。

利用されている方は多いと思いますが、キャッシュレス決済は、現金を準備する手間が省ける、決済方法によってはポイント付与やポイント還元などのメリットがあります。店舗側からすると導入費用や決済手数料のコストが掛かるというデメリットはありますが、レジ締めの時間短縮など業務の効率化、売上管理が楽になる、消費者の手持ち現金不足により機会損失の防止になるというメリットもあります。

2021年のキャッシュレス決済比率は32.5%に及び、国は2025年までに40%程度、将来的には世界最高水準の80%まで上昇させることを目指してキャッシュレス決済の推進に取り組んでいます。11月にはキャッシュレス法が施行され、2023年の1月に車検費用がキャッシュレスで支払えるようになる見込みで、他にもパスポート発給手数料や登記関連手数料、交通反則金なども順次対応していく予定です。

しかし、キャッシュレス化によって現金の流通が減っているかというと、現金の流通高は年々増加しています。ニッセイ基礎研究所が作成した資料によると、2000年には60兆円程度だったのが2016年頃に100兆円、2020年には120兆円規模になっています。

キャッシュレス

内訳を見ると、少額の硬貨の供給量は減っていますが、1万円札がとくに増えており、国民の預貯金、そして「タンス貯金」が増えていることが原因と考えられています。自宅に現金を保有する理由として一番多いのが「現金引き出しが面倒・手数料がかかる」というものでした。「タンス貯金」をいかにして世の中に出回らせ、消費に促していくかが、キャッシュレス化推進の鍵になりそうです。

2022年11月号 どうなる国民年金~保険料負担増の危機到来!?

10月は厚生年金加入者にとっては気になるニュースがありました。

1つは国民年金の支給額を将来5万円台に維持するため、厚生年金から資金を流用する案が出ました。損をするのは一部の高年金受給者で、大半の世帯は給付水準が上がるという話もありますが、サラリーマンとして毎月給与から厚生年金保険料が控除されている身にとっては気になる話です。

2つめは国民年金の保険料納付期間を現行の40年間から5年延長して45年間とする案を議論する方針が決まりました。早ければ2025年の通常国会で法改正となるようです。企業で65歳までサラリーマンを続け、厚生年金に加入する人には関係ありませんが60歳~65歳未満で個人事業者の人・無職の人は保険料負担が増えることになります。

そもそもの問題としては少子高齢化、物価高騰、国民年金の全額免除・猶予者の増加等が挙げられます。人生100年時代、65歳まで働くのが当たり前となりそうですね。

公的年金加入者数の推移

参考:厚生労働省年金局 令和3年度の国民年金の加入・保険料納付状況(公的年金加入者数の推移)

2022年10月号 インボイス制度いよいよ1年後スタート!準備はできていますか??

 令和4年10月となりまして、来年令和5年10月よりスタートのインボイス制度まで残り1年を切ることとなりました。また、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者(インボイスの発行事業者)の登録を受ける場合には、原則として令和5年3月31日までに提出する必要があり、登録申請手続きの期限としては残り半年ないことになります。自社のみならず、取引先に令和5年10月1日から適格請求書発行事業者として登録をした上で取引を継続したい場合には、令和5年3月31日までに対応が原則必要となりますので注意しましょう。

 では、世間のインボイス制度の対応状況はどのようになっているのでしょうか。令和4年9月8日に日本商工会議所ならびに東京商工会議所は「『消費税インボイス制度』と『バックオフィス業務のデジタル化』等に関する実態調査」の結果を取りまとめて発表しました。気になる点を取り上げてみましょう。(参考:https://www.jcci.or.jp/20220908kekka.pdf

①インボイス発行事業者の登録申請状況

 小規模な事業者ほど登録申請は進んでおらず、売上高1000万以下の事業者としてはその内の1.6%程度が登録申請済みということで、まだまだ登録が進んでいないのが現状のようです。また、「取引先から要請があれば検討する」という事業者が24.7%と、要請がなければこのままでという事業者や、「制度内容を理解しておらず、検討していない」という事業者が21.2%と多くを占めていることから、企業としても早いうちに小規模事業者への対応を進めていく必要があります。

②インボイス制度導入に向けた課題

 インボイス制度導入に向けた課題としては「制度が複雑でよくわからない」が約5割となっており、そもそもの制度理解が大きな課題となっているようです。結果として登録申請も進まないという状況になっているのかもしれません。他にも課題は様々ですが、いずれにしても令和5年10月よりインボイス制度がスタートすることになりますので、改めて自社の課題・対応スケジュールを確認してはいかがでしょうか。

2022年9月号 手形交換所廃止~そもそも手形交換所とは?~

 7月下旬に手形交換所の業務が2022年11月に終了するというニュースがありました。交換業務については電子交換所に移管するとの事ですが、実際の利用者の手続きには特段変更はなく、紙の手形もこれまで通り利用ができるようです。私たちにはあまり馴染みのないものですが、いったいどういう仕組みなのでしょうか。

 銀行には、主に企業を中心とした顧客から毎日大量の手形が持ち込まれます。手形の支払側も受取側も金融機関が同一であれば、金融機関側は口座間の残高移動によって処理をすることが出来ます。しかし、決済が全国的に行われるため、通常は一致しないことが普通です。そこで、同じ地域内の金融機関が手形交換所に一定の時間にこれらの手形類を持ち寄り、お互いの銀行が支払うべき手形類を相互に交換します。持ち帰り手形と持ち出し手形の差額は、各金融機関が日本銀行に有する当座勘定の間で振替処理がされます。こうした決済交換を行う場所が手形交換所になります。

 今年の11月以降も紙の手形を利用することはできますが、経済産業省は2026年を目途に紙の手形について廃止を通達し、現金振り込みや電子手形への移行を呼び掛けています。紙の手形は、紙代・印刷代・郵送代・保管をしておくための費用などがかかり、紛失してしまうリスクもあります。また、手形金額に応じ印紙税も課税されていきます。電子手形の場合、そういった費用が無くなります。受取側は、支払期日に自動入金されるため取立失念リスク、紛失・盗難リスクが解消されます。2013年にできた「でんさい」の利用登録者数は昨今伸び悩んでいましたが、コロナ禍で再び見直され、増加傾向にあります。

 「手形」であれ、「でんさい」であれ大手企業と取引のある中小企業は、大手企業の判断に振り回される形になります。紙の手形が廃止になり、電子手形になったとしても支払いサイト、入金サイトは変わりませんので、引き続き資金繰りに気を付けていかなければなりませんね。

2022年8月号 坊主丸儲けは一部の寺社仏閣だけ?

このところ、宗教法人に対するニュースが増えていますね。

昔から「坊主丸儲け」という言葉があるように、一般的に宗教法人は法人税、消費税、固定資産税等々が課税されません。ただし、宗教法人が行う事業はすべて課税されないのか?というとそうではありません。「本来の宗教活動」に対して行う事業は課税されませんが、法人税法では収益事業として34種類の事業が挙げられています。(物品販売業、不動産貸付業、席貸業など)
具体的な例としては、駐車場の貸付、結婚式後の披露宴での席貸しや飲食物の提供などです。
物品販売の中でも、お守りやおみくじの販売は仕入値からすると利益が出ているようにも思われますが、実質的な喜捨金と認められるような場合は収益事業ではありません。また、結婚式場の経営も神前式など本来の宗教活動の一部と認められるものは収益事業ではありません。ちなみに、お賽銭は信仰心に基づいた寄付の一種であると判断されるため、課税されません。

そもそも課税される法人は営利目的で設立されており、宗教法人は「教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする団体」とされていますので、設立の目的が根本的に異なります。
例えば、東京都港区にある増上寺はおよそ24,000坪(約79,200平米)と言われていますが、この土地に対して営利目的の法人と同様に固定資産税が課税されると運営が立ち行かなくなる可能性がありますね。将来安心してお墓に入るためには宗教法人が優遇されているのは仕方がないかもしれません。

ただ、現在の税法が未来永劫続くわけではありません。この機会によりよい税法について考えてみてはいかがでしょうか。


2022年7月号 外れ馬券は経費にならない!?税務上の考え方

今回は最近話題になりました、とあるお笑い芸人が馬券を的中させたはいいものの税務調査が入り、多額の追徴課税を取られてしまった件から話を広げていきたいと思います。

 まず今回の件は、競馬の払戻金が一時所得なのか雑所得なのかという点が話の発端になります。過去の事例で、雑所得として処理をすることが認められた競馬の払戻金の事例もあるのですが、全競馬場のほぼ全レースの馬券を購入している場合や、年間で数億円単位を購入している場合なので、一時所得として扱われるのが原則的な考え方です。税務的な観点からみると雑所得は、購入した馬券のうち外れた馬券も含めて経費として扱うことができると考えられるため、上記のように頻繁に競馬を行い高額な当たり馬券を手にしたような場合は、一時所得として処理するよりも課税される金額は少なくなる可能性が高いと言えます。

 では今回のケースではどちらに該当するのでしょうか。現行法令では雑所得として取り扱うのは難しいという否定的な意見が多いように感じます。今後は東京国税不服審判所で改めて調査され、裁決が行われるためどのような裁決となるのか注目したいところです。

 それでは、今後争う場となる国税不服審判所とは何でしょうか。国税不服審判所とは、国税局や税務署から分離された別の機関であり、納税者と税務署等の双方の主張を聞き、必要があれば自ら調査を行って、公正な第三者的立場で審理をした上で裁決を行います。国税不服審判所の裁決は行政としての最終判断となるため、納税者側の意見が認められるような裁決となった場合に税務署等は、不服があっても訴訟を提起することはできません。ただ、2020年の結果をみると納税者側の意見がなんらかの形で認められたのは10%程度となっており、納税者側の意見が認められる方がまれな状況となっています。納税者側は、裁決に不服がある場合は訴訟を提起することができ、最高裁まで争うことも可能ですが、長い年月や高額な費用がかかることが想定されます。

 今回の競馬のケースでは問題提起の意味合いもあるため、最終的な判断がされるのは国税不服審判所ではなく、裁判所の判断にまでもつれ数年後になることも考えられますが、どちらにしても一時所得・雑所得の判断に困らない具体的な判断基準を示してもらいたいところです。

2022年6月号  マイナポイント付与開始~健康保険証と口座登録~

 平成28年1月に普及が始まったマイナンバーカードですが、もう6年半が経過しようとしています。しかし令和4年5月1日時点の普及率は、44.0%と半数に満たない状況です。政府としては、2022年度末にほぼ全国民への普及を目指しています。かねてから囁かれていた、マイナポイント事業の第2段の申し込みが6月30日からスタートします。マイナンバーカードの取得者は、①健康保険証、②公的給付を受け取る預貯金口座をマイナンバーカードに登録すると、それぞれ7,500円相当のポイントが付与され、両方登録すれば、1万5,000円相当分を取得することが可能です。ポイントは電子マネーやスマートフォンのORコード決済で使うことができ、マイナンバーカードを9月末までに申請した人がポイントを受け取れる対象者となります。なお、既にマイナンバーカードを取得している人も対象です。政府は既にカードの新規取得者に最大5,000円分のポイント付与を今年の1月1日より開始していますが、今回の保険証と口座登録も含めれば最大で計2万円分のポイントを得ることが可能です。登録は、マイナポータルより行います。

 一方で、大きな課題も。。。マイナンバーカードと健康保険証の機能を併せ持つ「マイナ保険証」を利用することで患者が窓口で支払う医療費が増えるといった問題が発生しています。マイナ保険証を使用すれば、医師や薬剤師が患者の健康診断の結果や処方歴などを一元的に把握でき、複数の医療機関の診察券が1枚に集約されるなどのメリットがあります。しかし、医療機関がマイナ保険証を導入するには、コストも手間もかかるため、導入率はいまだ1割程度です。そこで、マイナ保険証を導入した医療機関は、診療報酬を引き上げることにしました。そのしわ寄せは利用者にきているのが現状です。

 診療費というのは、点数制というのもあり、素人には金額がわかりにくいものとなっています。お会計時に、金額に文句を言う人もいないのではないでしょうか。もしマイナ保険証を使わずに、従来の保険証を出したとしても、マイナ保険証対応の医療機関であればその場合にも、多少利用者に負担がかかるようです。どちらにせよ支払うことになるのであれば、一層の事マイナンバーカードを取得されていない方は、取得したほうがいいのかもしれませんね。

2022年5月号  アルコールチェック義務化拡大!

 2022年4月1日に道路交通法が改正され、乗車定員が11名以上の自動車を1台以上または乗車定員に限らず5台以上を使用する事業所の運転者に対して、酒気帯びの有無を確認するアルコールチェックが義務化されました。
 2021年6月に千葉県八街市で下校中の小学生の列にトラックが衝突し、5名が死傷する交通事故が発生したこともあり、飲酒運転は社会的に大きな問題となっています。業務上、自動車などを運転する従業員がいる企業は、運転者について厳重な管理が必須となります。

アルコールチェックの方法は2段階で義務化されます。
2022年4月から義務化される内容は、以下の2点です。
①酒気帯びの有無を目視にて確認(事業所の安全運転管理者が運転の前後に実施)
②確認内容を記録したデータ等を1年間保存すること

2022年10月から義務化される内容は、以下の2点です。
①アルコール検知器を使用しての酒気帯び有無の確認
②アルコール検知器を常に使える状態にしておくこと

【スケジュール】

図:スケジュール

 また、アルコールチェックは、「安全運転管理者」が実施する必要があります。
「安全運転管理者」は、事業所で使用する自動車の乗車定員が11名以上の自動車を1台以上、または乗車定員に限らず5台以上のときに選任が必要です。選任後15日以内に事業所の管轄の警察署への届出と、毎年1回の講習が義務づけられています。

 ちなみに、アルコールチェックを実施しなかったときの、直接的な罰則はありません。
ただしアルコールチェックを怠り、酒気帯びの運転になっているときは道路交通法違反になり、運転者のみだけでなく使用者(安全運転管理者、その他自動車を直接管理する者など含む)に3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。違反に使用された自動車は6ヶ月以内の範囲で使用できなくなることもあります。

 交通事故を起こした企業は「刑事上の責任」「行政上の責任」「民事上の責任」「社会的責任」が問われ、大きな代償を支払います。そうならないよう、事前に対策を進めていきましょう。

2022年4月号  災害へ備えましょう!  事業継続力強化計画認定制度とは

 先月は3月ということで東日本大震災を思い返すことや、また3月16日(水)に福島県沖を震源地とする大きな地震もあったことで、地震などの災害について改めて考える方も多かったのではないでしょうか。そこで今回は事業継続力強化計画認定制度についてご紹介をしたいと思います。


 まず事業継続力強化計画認定制度とはいったいなんでしょうか。これは、中小企業が防災や減災に関する事前対策の計画を経済産業大臣に申請し認定をうけることで、災害に備えるだけでなく税制面などで優遇される制度となります。本制度は2019年7月からスタートしており、制度の開始からは数年経過しています。2022年2月時点で、認定をうけた企業は約39,000社となっており、多くの企業が認定をうけている状態です。では認定をうけることでどんなメリットがあるのでしょうか。


【メリット1】国のお墨付きがもらえる

 認定をうけることで、認定ロゴマークの使用許可や、認定企業として中小企業庁のHP上に会社名が公表されます。災害対策への意識が高い企業としてアピールすることが可能になります。

【メリット2】対象の防災・減災設備が税制優遇される

 自家発電機、制震・免震ラック、防火シャッターなど防災・減災に対する設備の購入の際に特別償却20%をうけることができます。対象設備や購入金額など条件があるのでその点は注意が必要です。

【メリット3】補助金の審査で加点措置あり

 認定をうけることで、補助金の審査で加点され採択されやすくなります。
 加点される補助金として代表的な例としましては、ものづくり補助金があげられます。

【メリット4】金融支援

 日本政策金融公庫から、認定を受けた事業者が行う防災・減災の設備投資に必要な資金については低利融資をうけることができます。
 また信用保証協会から追加保証や保証枠の拡大を受けることができます。


 認定をうけることのメリットをあげさせていただきましたが、やはり一番重要なのは災害時にどのような対応をするかを予め考えておくということです。災害といっても地震や水害、また今現在も蔓延しているコロナウイルスのような感染症のような災害もあります。様々なことに備え、事業の継続性を高めていきたいですね。事業継続力強化認定制度に興味を持たれましたら各担当にお声がけください。

2022年3月号  インボイス制度続報!!免税事業者取引と独禁法・下請法について

 財務省や公正取引委員会等は、同省等のウェブサイトに「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を公表しました。令和5年10月より始まる消費税のインボイス制度。免税事業者からの仕入れには仕入税額控除が制限されるため、買手が消費税相当額を仕入先に支払わないことや、仕入先に課税事業者への転換を求めたにも関わらず取引価格を据え置くことなどを懸念する声もあります。しかし、そうした買手の行為は独占禁止法や下請法、建設業法で問題となることがあり、今回、免税事業者との取引に係る独占禁止法や下請法等の考え方等がQ&A形式で示されました。

 基本的に事業者がどのような条件で取引するかについては、取引当事者間の自主的な判断に委ねられます。しかし、免税事業者等の小規模事業者は、売上先の事業者との間で取引条件について情報量や交渉力の面で格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすい場合も想定されます。皆様が取引をされている外注先などの取引先についても、いまだにインボイス制度をご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。世間でもまだインボイス制度の事は周知されていないように感じます。自己の取引上の地位が相手方よりも優位である場合に、その地位を利用して、相手方に不当に不利益を与えることは、「優越的地位の濫用」として、独占禁止法上問題となるおそれがあります。インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すこと自体が、直ちに問題となるものではありませんが、見直しに当たっては、「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。優越的地位の濫用には以下の項目が考え方としてあげられます。

1 取引対価の引下げ
2 商品・役務の成果物の受領拒否、返品
3 協賛金等の負担の要請等
4 購入・利用強制
5 取引の停止

 ポイントは、双方の話し合いのうえで取引対価の見直しを行う場合には独占禁止法上の問題にはならないという点です。ただし、話し合いといっても形式的なものにすぎず、著しく低い取引価格を設定した場合には問題となります。インボイス制度が始まるまで、あと1年7ヶ月です。

 2月に入り、適格請求書発行事業者の登録番号通知書が続々とお手元に届いているかと思います。取引先への説明、交渉の際に通知書を用いてお話をしてみてはいかがでしょうか。

2022年2月号  相続税・贈与税の改正はいつ?

 日本では贈与税の方が相続税より高い税率が設定されているため、相続により資産の移転を行う方が一般的です。しかし、高齢化・長寿命化に伴い高齢世代に資産が偏在し、相続による資産の世代間移転の時期が高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にあります。一方で、相当に高額な相続財産を有する層にとっては、毎年110万円を贈与し続けて相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転しているのが現状です。そういった富裕層に限らず、若年世代への資産移転を促し、経済が活性化することを期待し、相続税・贈与税の改正が検討されています。

<想定される改正内容>
 ①持ち戻し期間が3年からもっと長く?
 ②孫に対する贈与も持ち戻しの対象に?
 ③110万円以上の贈与をしても贈与税は課税しない?

①現在の税制では、3年内加算のルールというものが存在します。これは、生前贈与をしてから3年以内に亡くなった場合、相続税の計算上、3年以内に贈与した財産も加算して相続税を計算する、というルールです。贈与税がかからないと思って110万円を毎年贈与していても、亡くなる前3年分については相続税の計算に含める必要があります。

 日本では、この持ち戻し期間は3年間なのですが、イギリス7年、ドイツ10年、フランス15年、アメリカは一生涯と日本より長いのです。この期間が短い方が贈与税の非課税枠を長く活用できるため、日本は優遇されているかもしれませんが、改正により3年より長くなるかもしれません。

②先ほどの3年内加算のルールの対象者は、ざっくりいうと、相続人に対する贈与に限定されています。つまり、親が亡くなり、子が相続人となるケースでは親から孫や曾孫に対する贈与は、原則として3年内加算のルールが適用されません。こうした節税を防ぐ改正が行われる可能性があります。

③相続税・贈与税改正の目的は高齢者の資産を早く若者へ移転することです。そのため、①の持ち戻し期間を長くする代わりに、贈与税の非課税枠が拡大されるかもしれません。

 昨年12月に『令和4年度税制改正大綱』が発表されましたが、具体的な改正はありませんでした。そのため2023年までは現行の税制が適用されます。相続税・贈与税は決して一部の富裕層だけの話ではありません。これを機に一度、家族で話をしてみてはいかがでしょうか?

2022年1月号  ワクチン接種証明アプリの活用は?

 2021年12月20日からデジタル庁の「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」が利用可能となりました。登録を行うには、必ずマイナンバーカードが必要です。未取得の方はマイナンバーカードの申し込みから必要となります。また、海外に行く機会のある人はパスポートも必要です。実際に登録を行ってみると4桁の暗証番号さえ忘れていなければ、数分で簡単に登録ができました。すでに登録をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 接種情報が正しく表示されないといった不具合や旧姓併記のマイナンバーカードが未対応などまだシステム対応が必要な部分はあるようです。しかし、コロナで経済的な打撃を受けた飲食業や観光業などでは接種証明書アプリを利用した事業活動には、様々な期待が寄せられています。

 海外では様々な施設を利用するときに、ワクチン接種証明書や陰性証明書の提示が義務づけられた代わりに、顧客が戻り経済活動が活性化された事例もあります。

 日本で接種証明書を事業活用するにはどうしたらよいでしょうか?

 政府は、ワクチン接種証明書の事業活用について以下のような考え方を示しています。海外と比べ、罰則規定は設けない方針となっています。

①民間が提供するサービスに対しては、ワクチン接種証明書の活用は幅広く活用が認められる

②一方でワクチン接種証明書を提示しない人に対して、法外な料金を請求するなどは許されない

③自治体が管理しているワクチン接種証明データを利用したアプリの開発(12/20利用開始)

<参考:新型コロナウイルス感染症予防接種証明書のデジタル化について | 厚生労働省>

 日本政府はワクチン接種証明書の活用について、民間での活用を幅広く認めています。一方で、ワクチン接種証明書を提示しない人に対する法外な請求など、「ワクチン接種証明書を利用しない人に対する不利益」は与えないよう、配慮を求めています。よってワクチン接種証明書を事業活用する場合は、料金割引や特典の付与など、証明書を提示する人が得をするような仕組みの構築がおすすめです。

 すでに一部の商業施設では、接種証明書の提示で値引きや特典付与を実施しているところもあります。利用者も混雑する時間をさけたり滞在時間をなるべく減らすなどの行動は必要なことにかわりありません。年末には、オミクロン株の市中感染が確認され、一部の小売店では年始営業を見合わせるところもありました。事業者側も集客だけを考えるのではなく、密をさけるための様々な工夫をしなくてはなりません。

 2020年から21年は、テレワークやWeb会議が普及しました。2022年は、これまで同様に感染予防対策を行ったうえで、接種証明書アプリなどをうまく活用し事業活動が活発になることを願います。