事務所通信別冊

2024年5月号 森林環境税と森林環境譲与税について NEW!!!

 突然ですが、皆さんは日本の国土の約70%が森林であることを知っていますか?そんな森林の機能を十分に発揮させるために、森林環境税という名前で2024年度から1人年額1,000円が徴収されます。なお、東日本大震災復興基本法の理念に基づき、徴収されていた年額1,000円が2024年度からはなくなり、森林環境税が導入されるため徴収される金額は前年と変わっていません。

 森林環境税とは、国内に住所のある個人に対して課税される国税であり、市町村において個人住民税均等割と併せて徴収される税金で、税収は1年で約600億円にのぼるといわれています。この徴収された税金は政府が回収し、回収した全額を国が「森林環境譲与税」として都道府県・市町村へ譲与する仕組みです。

       

       総務省:森林環境税及び森林環境譲与税

 森林整備が緊急の課題であるため、森林環境譲与税は2019年度(令和元年度)から前倒しで国庫の交付金として都道府県・市町村へ譲与されています。

1.    問題点

森林環境譲与税の都道府県・市町村への配分は、私有林や人工林の面積に応じた配分が50%、人口に応じた配分が30%、林業従事者数に応じた配分が20%となっており、森林がなくても人口が多い都道府県・市区町村には多額の譲与税が配分されることが問題視されています。この配分された譲与税は都道府県及び市区町村でどのように使ったかホームページなどで明記しなければなりません。

また、大阪府など独自に導入している森林環境税があり、「二重課税ではないか?」と問題になっています。

2.    江戸川区での使われ方

東京都産業労働局のホームページでは、東京都の令和元年度から令和4年度の森林環境譲与税の使途と、都内市区町村の令和元年度から令和4年度の譲与税の使途の事例を確認することができます。当事務所がある江戸川区は令和4年度に73,874千円交付されており、国産の木材を使って小学校の内装の改築や備品の購入に充てています。

  皆さんの住んでいる地域ではどのような用途で使われているか、調べてみてはいかがでしょうか?

2024年4月号 有給休暇の管理にもPXシリーズを活用しましょう

 Ain通信では残業時間の管理について、PXシリーズの役立つ機能をご紹介しました。有給休暇も取得状況などを簡単に管理できますが、皆さんご活用いただいておりますか?

 PXシリーズでは、労働基準法で作成が義務化されている「有給休暇管理簿」、有給付与日数・月ごとの取得状況(日数)を確認できる「有給休暇取得状況一覧表」、社員・部門別での有給休暇消化率が確認できる「年次有給休暇の消化率」が出力できます。

 20194月からは、使用者は法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の労働者に対して「年5日の年次有給休暇の取得」が義務付けられました。違反した場合、30万円以下の罰金が科せられますが、労働者ごとに成立すると考えられるので、5名の従業員に取得させなかった場合は、150万円以下の罰金に科せられる可能性があることになってしまいます。うっかり・・・ということがないよう、定期的な管理や取り組みが必要になります。

 そして、年5日の有給休暇を確実に取得する方法を一部ご紹介します。

 

 ※計画年休を導入するには就業規則等への明記と労使協定の締結が事前に必要になります。

継続的に良いパフォーマンスを維持し仕事で成果を出すためには、休暇を活用して定期的にリフレッシュし、次の仕事にむけて心身ともにコンディションを整えることが重要です。生産性の向上や離職率低下も期待できます。有給休暇の管理にも、ぜひPXシリーズをご活用ください。


2024年3月号 税金の納付方法~キャッシュレス決済をお得に利用~

所得税・住民税等の税金は納付書で納める他に、TKCシステムをご利用の場合、「電子納税かんたんキット」を利用してダイレクト納付またはインターネットバンキング等で納めている法人が大半だと思いますが、昨今のキャッシュレス化の影響により、国税・地方税ともにPay払い(スマホアプリ納付)での納税ができるようになっています!

基本的に納税は現金または預金が減少するだけというイメージですが、Pay払いを利用すると税金の納付自体にはポイントがつきませんが、クレジットカード等からのチャージにはポイントが加算されますので、現金・預金で納付するよりポイント分はお得になります。ただし、Pay払いについては制限()がありますので、すべての法人が他の決済方法の代わりに利用できるわけではありませんが、確定申告で国税(所得税・消費税)または毎年地方税(固定資産税、自動車税等)を納付している個人でスマートフォンをお持ちの方はチャレンジしてはいかがでしょうか?

)スマホアプリはパソコンには対応しておらず、スマートフォンがなければできません。法人内で共有のスマートフォンがあれば話は別ですが、基本的には個人に紐づくスマートフォンで決済して立替精算をすることになるでしょう。
デメリットとして、納付できる税金の上限は1回あたり30万円ですので税額が大きい場合は利用できません。領収書は発行されません。地方税は納付書に印字された情報が必要ですので口座振替を利用している場合等は納付書の送付依頼が必要です。

 Pay払いの具体的な納付方法の概要は以下の通りです。国税と地方税で納付方法が異なります。 

国税の場合 スマートフォンから「国税スマートフォン決済専用サイト」にアクセスし、必要事項を入力して決済します。

    


地方税の場合 納付書に印字されたバーコード又はeL-QRをスマホアプリで読込・決済します。

    


2024年2月号 確定申告 所得の申告漏れに注意! 

 2月になり、確定申告の時期がやってきました。改めてですが、令和5年分の確定申告時期は令和6216日~315日までの期間となります。なお、還付申告については、215日以前でも行うことができます。近年ではふるさと納税が広まったことや副業を行う人が増えたこと、また申告自体もスマホを使って申告できるなど環境が整ってきたこともあり、より身近なものとなってきました。確定申告をする際に注意したいのが所得の申告漏れです。

    副業の所得20万円以下は確定申告しなくてよい??

 会社員が給与を受け取る一方で副業で収入を得ていた場合、副業の所得が20万円以下の場合は確定申告を行う必要はないこととされています。ただし、医療費控除やふるさと納税での寄付金控除等で確定申告を行う場合には、20万円以下の副業の所得であっても含めて申告をする必要があります。確定申告を行う場合に、20万円以下の所得は申告をしなくていよいと勘違いしないように注意が必要です。

 

    退職金については確定申告しなくてよい??

 一般的に退職金に係る所得税等は源泉徴収によって課税がされ、確定申告を行う必要はありません。しかしながら、①と同様に医療費控除やふるさと納税での寄付金控除等で確定申告を行う場合は、退職金についても含めて申告を行う必要があるので注意が必要です。含めることで変わる場合があるのが、基礎控除の金額です。

 基礎控除は、合計所得金額が2400万円以下の場合は48万円控除となりますが、2400万円超から段階的に控除額が下がり、2500万円超の場合は基礎控除額が0円となります。判断の基準となる合計所得金額には、退職金の所得についても含まれるため、含めて申告する必要があります。医療費控除等で申告したはいいが、基礎控除が0円になって、結果的に損をしたとならないように注意が必要です。

 

    株の配当や譲渡益については申告しなくてよい??

 令和611日より、いわゆる新NISAがスタートし、より投資への注目は増している状況です。NISAは非課税のため申告の必要がなく、また源泉徴収選択口座を利用している場合も口座内で課税関係が完結するため、基本的には申告の必要はありません。しかし、源泉徴収選択口座でない口座での取引、非上場株式、海外で保有している株式など申告の必要があるものも多くあるので注意が必要です。

 上記で紹介したもの以外でも、うっかり所得の申告漏れというのは起きてしまいますので、申告の前に一年分の入出金を振り返ってみるというのもよいかもしれません。

2024年1月号 所得税・個人住民税の定額減税

 昨年1214日に公表された令和6年度税制改正大綱についてはニュースや新聞等で皆様も既にご承知のことと思います。今月号では、所得税・個人住民税の定額減税について取り上げてみたいと思います。なお、正式な税制改正は春頃に決定する予定です。

 日本の経済は、賃上上昇・消費拡大・投資拡大の好循環の実現にはまだ至っていません。デフレに後戻りさせないため、一時的な措置として、令和6年分の所得税及び個人住民税の減税が実施されます。 

  

※令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下の人が対象(給与所得のみの場合、収入2,000万円以下)

実施方法は、給与所得者のケース、年金受給者のケース、事業所得者等のケースとそれぞれ取り上げられていますが、ここでは給与所得者のケースをご紹介します。まず所得税については、令和661日以後最初に支給される給与等から控除される源泉所得税から特別控除の額を控除することとなります。なお、6月分の給与で控除しきれなかった場合には、7月以降順次控除することとなります。例えば、毎月の給与から控除される源泉所得税が12,000円だった場合、6月及び7月の源泉所得税は0円、8月の源泉所得税は6,000(30,000円-  12,000円×2)9月以降の源泉所得税は通常通り12,000円となります。差し引かれる源泉所得税が少なくなれば、手取り額が増えるため、給与所得者に還元されるという仕組みになっています。住民税については、特別徴収義務者(会社)は令和66月の給与支給時には、特別徴収を行わず、特別控除の額を控除した後の個人住民税の額の11分の1の額を令和67月から令和75月まで、それぞれ給与の支払いをする際毎月徴収します。例えば、年間の給与から引かれる個人住民税の総額が240,000円だった場合、240,000円-10,000円=230,000円を令和67月から令和75月までの11ヶ月間で均等に給与から徴収することとなります。

 なお、上記でご説明した以外にも注意が必要な点はいくつかあります。給与と公的年金を両方もらっているケースの実施方法など公表されていない部分も多い状況です。今後どのようになっていくのか、動向に注目したいですね。個人的な感想としては、「手取り額が数ヶ月間増えていたが、気にしなかった」という人や、「そもそも手取り額が増えていたことも気づかなかった」という人が大半を締めそうな感じがします。実施したことによる影響度などを、見える形で公表してもらいたいものです。

2023年12月号 証憑保存機能のご紹介 

 新しい機能も追加された、TKC自計化システム(FXシリーズ)の「証憑保存機能」を改めてご紹介します。

    電子帳簿保存法に完全準拠

電子帳簿保存法の宥恕措置が202312月末で廃止されます。そのため、202411日以降は電子取引データは紙出力保存ではなく、電子データのまま保存することが必要になります。証憑保存機能では電子帳簿保存法のタイムスタンプ付与・訂正削除履歴・検索機能などの保存要件を満たし、法令に準拠した形で電子保存できます。電子取引だけではなく、スキャナ保存についても同様に要件を満たした保存になります。紙で受領した書類については、今後も紙での保存は認められますが、スキャナ保存することにより、読み取った後の紙の書類は即廃棄可能になり、ファイリング作業や保管スペースが不要になるなどメリットも大きいですので、この機会に全ての書類を電子保存に切り替えてはいかがでしょうか?

    証憑保存ツールを利用して簡単に保存

メールやWebサイト上で受け取った請求書や領収書などを保存する際、今まではPC上に一時保存し、そのあと証憑保存機能に取込むという方法でしたが、新たに追加された「TKC証憑保存ツール」を利用すると、印刷操作だけで証憑保存機能を起動することなく簡単に保存できます。

    承認機能が追加

 承認機能を付加した書類の種類を選択することで、承認権者の承認がされた書類のみ保存することもできるようになりました。書類の種類によって承認権者を変更することも可能です。

    事業者登録番号を読取り、自動でチェック

インボイスの事業者登録番号を読取り、国税庁公表サイトの登録状況をシステムが自動でチェックするので、発行者の実在性が確認できます。また、この情報をもとに取引先マスターも更新できます。

    デジタルインボイス(ペポルインボイス)が受信可能

 10月から当社の請求書を一部ペポルインボイスへ切替発行しておりますが、他社が発行するペポルインボイスも証憑保存機能で受信することができます。


ほかにも税率別の金額や税額、手書きも読み取れる高精度のAI読取りオプションなどもあります。操作方法などご不明な点はお気軽にお問合せ下さい。

機能をフル活用し、経理業務の省力化をしましょう。

2023年11月号 ふるさと納税 ルール改悪と本来の目的

 年末が近づき、あとどのくらいふるさと納税をしようか悩んでいる方も多いのではないでしょうか?平成20年度から始まったふるさと納税の受入額、受入件数は令和4年度実績で約9,654億円(対前年度比:約1.2倍)、約5,184万件(同:約1.2倍)。下図の通り、毎年増加しています。

                

                                 参考:(令和5年度実施)ふるさと納税に関する現況調査結果 自治税務局市町村税課 令和581

そんな中で、今年の10月からふるさと納税のルールが変更・改正されました。1つ目が経費ルールに関するもので、返礼品の金額および経費は寄付金額の5割までとされていますが、これまで経費とするか曖昧だった「ワンストップ特例事務費用」「寄付金受領証の発行・発送費用」「その他付随費用」が経費に含まれることになりました。そして2つ目が産地基準に関するもので、返礼品は地場産であることが厳格になりました。これにより具体例では、別地域産の米を精米した地域の返礼品とすることができなくなります。これらのルール変更・改正により寄付額の増加(お得度の減少)が見込まれたり、返礼品の品質低下や種類減少等の影響が出たりする可能性があり、世間では改悪だと言われています。

 ただ、返礼品目当てのふるさと納税をすることで減収に苦悩している自治体も多くあります。例えば東京23区で最も人口が多い世田谷区は、過去最多の約98億円の減収見通しであり、公共施設の建替えや福祉の予算等への影響が懸念されます。

余談ですが、事務所がある江戸川区内に来たる113日に『魔女の宅急便』著者であり、江戸川区にゆかりのある児童文学作家・角野栄子さんの文学館「魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)」がオープンするのに伴い、ふるさとチョイスで寄付を募っており、税制上ふるさと納税として扱われますが、返礼品はありません。この寄付以外でも江戸川区はふるさと納税の返礼品がありません。しかしながら、受入額は約5,800万円(令和3年度実績)とされています。返礼品によらず、ふるさとを大事にするという本来の目的も大事にしないといけませんね。

2023年10月号 ついにインボイス制度が開始されました

 今月1日より、ついにインボイス制度が開始されました。自社の請求書のフォーマット変更など基本的な対応は終えているかと思いますので、今回は細かいところですが抑えておきたい部分について紹介していきたいと思います。

〇媒介者交付特例について

 媒介者交付特例とは、要件を満たすことで委託者に代わり、受託者が自己の名称及び登録番号を記載したインボイスを購入者に交付することができる特例です。例としてはAmazonなどのECサイトの取引です。Amazonの場合につきましては、ビジネスアカウントを使用している場合は媒介者交付特例が適用されたインボイス、つまりAmazonの登録番号が記載された形で発行予定となっています。一方で個人用アカウントの場合は媒介者交付特例は適用されず、販売事業者の登録番号が記載される予定となっており、自身の利用しているサービスがどのように対応しているのかを理解しておく必要があると言えます。

〇登録国外事業者に対する経過措置

 登録国外事業者についてはインボイス制度開始と同時に適格請求書発行事業者に自動的に移行することとなっています。そのため登録番号を記載したインボイスを発行することとなるのですが、登録国外事業者についてはシステム対応が困難であるなど、登録番号を記載できない困難な事情がある場合には、令和6331日まで登録国外事業者に係る登録番号を記載することができるとされています。インボイスの登録番号はT+数字13桁、登録国外事業者に係る登録番号は数字5桁と別物になりますので、インボイスの登録番号の代わりに登録国外事業者に係る登録番号が記載されていても混乱しないようにしましょう。ちなみに登録国外事業者はZoom,Slack,Adobe等が含まれており、あまり意識せず利用しているものも多いかもしれません。

ETCクレジットカードへの対応について

 クレジットカード利用明細書は通常、売手側が交付した書類ではないため、一般的にはインボイスには該当しません。しかしながら、ETCクレジットカードについては国税庁から柔軟な運用方針が示されました。従来はクレジットカード利用明細書がインボイスにならないため、都度利用証明書をダウンロードする等の対応が必要とされていました。今回の運用方針では、高速道路の利用が多頻度で全ての取引について利用証明書の取得・保存が困難である場合は、個々の高速道路利用の内容がわかるETCクレジットカードのクレジットカード利用明細書と、利用した高速道路会社等の任意の一取引に係る利用証明書を保存することで仕入税額控除が認められることとなりました。

 インボイス制度については頻繁に国税庁の情報も更新されており、実際に制度が始まって見えてくる問題点もあるかと思われます。柔軟に対応し、インボイス制度に頭を慣らしていきたいところですね。

2023年9月号 タワマン節税の仕組みについて

 相続税の負担を軽減するため、税金対策のひとつとして考えられてきたタワーマンション税制(以下タワマン税制)。 国税庁は今年に入り有識者会議を設置し、マンションの相続税評価額の算定方法のルールの見直しを始めました。令和6年以後については新ルールが適用される予定となっており、その動向に注目が集まっています。

 まず、タワマン税制の基本的な仕組みについて見ていきます。相続税の計算は、被相続人が所有していた財産を、相続税評価額に評価をしていきます。現金を1億円所有していた場合には、1億円として評価がされますが、仮にその1億円で不動産を購入していた場合、不動産の相続税評価額は1億円とはなりません。相続税評価額とは、国が定めたルールに従って計算されたものであるため、時価とは異なるのです。不動産の場合、市場価格の78割程度に抑えられる仕組みになっています。この仕組みを利用して、相続税対策として現金の不動産化がよく検討されます。マンションの評価は、土地と建物はそれぞれの方法で行うのですが、この市場価格との乖離は、マンションが高層であるほどその差は大きくなってきます。理由としては、マンションは一戸建てと違い居住者全員でそのマンションを保有していますので、11人敷地利用権が設定されています。マンション全体の土地面積の内、敷地利用権部分が自分の持分となり、高層マンションであればあるほど、細分化され狭小となるため、たとえそのマンションが好立地な場所であっても、相続税評価額は抑えることが出来ます。また、建物についても、建物の総階数、評価対象の所在階、築年数の反映が不十分だと評価額が市場価格に比べて低くなるケースがあります。(下記、国税庁の報道発表資料より引用)

          

 上記図のように、マンションの約65%は評価額が市場価格の半額以下となっている現状があります。また上層階であればあるほど、市場価格との乖離があります。今後は、評価額が市場価格の6割に達しない場合には、6割に達するように評価額を補正するような仕組みになっていくようです。時価は変動があるものですので、手間と時間をかけて物件購入を実現できても節税効果が小さければ、効果的な節税対策とはいえないかもしれないですね。


2023年8月号 「お盆玉」ってなに?

  先日、郵便局に行った際、「お盆玉袋」というポチ袋が販売されていました。「お盆玉袋」を初めて知ったのですが、2014年から郵便局で販売され始めたそうです。「お盆玉」は子どもや孫、親戚の子どもにあげるお盆時期のお小遣いのことで、「お年玉」をもじってそのように言われています。

「お盆玉」の歴史は古く、江戸時代に商家で丁稚奉公として働いている子どもたちが自分の家にお盆に帰る際に、新しい着物や下駄などを商家からもらう「お盆小遣い」という風習があり、それが昭和初期にお金を渡す形に変わったと言われています。ちなみに、「お年玉」の由来は「御歳魂」という、正月に歳神(年神)を迎えるためにお供えされた丸い鏡餅のこと。その餅は年神の生命ともされており、家族に分け与えることで一年を無事に過ごせるように祈るという宗教的な一面もあるそうです。

現在は、お年玉・お盆玉は時季の違いだけで同じ「お小遣い」という扱いですが、税の面から見ると同じではありません。

 

どちらも「無償で財産を譲る」行為になるため、贈与にあたります。『贈与税がかかるの?今まで申告したことないけど大丈夫!?』と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、お年玉は上記の贈与税がかからないとされる「年末年始の贈答」と考えることが出来ますので、贈与税はかかりません。(但し、「社会通念上相当」と認められる金額の場合のみで、例えば祖父・祖母から100万円ずつお年玉を貰った、というような場合は贈与税がかかる可能性もあります。)

 一方、お盆玉は上記には該当しません。ですので、贈与税の対象となり、他の贈与財産と合計して110万円以上を超える場合は贈与税がかかってしまうことになるのです。ですが、三井住友カード㈱が2018年に行った調査によると、子どもがもらったお盆玉の平均金額は9,345円とのことなので、あげる側は贈与税を心配する必要はなさそうです。

お盆玉は「迷惑だ」等の大人の意見も多くあるそうですが、今後新しい慣習となるのでしょうか?

2023年7月号 増加する社会保険料 賃上げ=手取り額の増加となる時代はいつ?

  令和4年度確定/令和5年度概算の労働保険料申告書の提出は終わりましたか?令和4年度以降雇用保険料率が引き上げられたため、多くの企業で保険料が増加したのではないでしょうか。ただ、ここ10年ほど十分な財源が確保されていると判断され、引き下げられていたものが元に戻ったのであり、約15年前は本人負担も事業主負担も現在より高い料率でした。労災保険料率については平成30年度以降変更なく、その他一般の事業については平成21年度以降3/1000で据え置かれています。

それでは健康保険料率、介護保険料率についてはどうでしょうか?(協会けんぽの全国平均)健康保険料率は平成21年度では8.2%でしたが、24年度まで毎年引き上げられ、その後現在まで10.0%で推移しています。介護保険料率は平成21年度が1.19%、一度引き下げがありましたが基本は引き上げで現在は1.82%です。

そして厚生年金保険料率は平成219月が15.704%、毎年0.354%ずつ引き上げられ、平成299月以降18.3%で固定されています。また、全額事業主負担の子ども子育て拠出金の料率は0.36%です。

では、具体的に毎月どのくらいの金額になるでしょうか?
月収30万円、40歳従業員の場合(通勤手当なし、一般の事業、協会けんぽで試算)


この場合、事業主の負担は月額で50,010円となり、給与30万円の16%を超えています。

15年前との比較では雇用保険、労災保険の変化はなくとも、健康保険、介護保険、厚生年金保険合わせて約5%引き上げという結果。雇用保険は今後順調に財源が積み立てられ、労災保険もより安全性が高まれば引き下げられる可能性があります。しかしながら、超高齢化社会を迎える日本では健康保険、介護保険、厚生年金保険は今後も引き上げが予想されます。

物価高騰の今、従業員の給与を上げたいと考えている経営者が多くいても、その分税金でとられてしまっては何の意味もありませんね。

2023年6月号 フリーランス保護新法成立 取引する上での注意点

  昨今は副業が活発化していることもあってか、社員という形にこだわらずフリーランスで働く方も増えてきているように感じます。フリーランスというと自由に働ける等の良い部分がある反面、労働基準法が適用されないため取引先との関係で弱い立場に置かれることが往々にしてありました。そのため2023224日「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(フリーランス保護新法) が国会に提出され、2023428日に成立しました。施行日は20235月時点では未定ですが、2024年秋頃までには施行が予定されています。実際に施行された際にどのような点に注意が必要なのか確認していきましょう。

①給付の内容その他の事項の明示

 フリーランスに業務を委託した場合、業務の内容・報酬の額・支払期日等を書面またはメール等の電磁的方法で明示する必要がでてきます。明示事項については、今後の規則の制定により追加されることが考えられるため注意が必要です。

②報酬の支払期日

 フリーランスから成果物を受けたり、役務提供を受けたりした場合には、原則としてフリーランスから受領した日から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内に支払をする必要があります。現状が「月末締め/翌月末払い」であれば問題ありませんが、例えば「月末締め/翌々月10日払」のような場合は最大で70日の期間が開くため問題となります。

③委託事業者の遵守事項

 「フリーランスの責めに帰すべき事由なく給付の受領を拒絶すること」「フリーランスの責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること」等のフリーランスが不利益を受けるような事項を事業者側に禁止事項として定めています。長期間の業務委託がなされる場合に適用されるとのことですが、どの程度の期間なのか等具体的な部分については今後明らかになっていくと思われます。

 代表的な事項を紹介させていただきましたが、上記含めたフリーランス保護新法に違反した場合には50万以下の罰金が科されることもあり、両罰規定であるため法人の場合には法人だけでなく行為者である個人もあわせて罰せられます。まずは、フリーランスとの取引状況について現状を確認し、どのような対応が必要か検討をしてみましょう。

2023年5月号 社会保険料増額か、異次元の少子化対策の財源は?

  今年の初め、岸田首相が記者会見で掲げた「異次元の少子化対策」。少子化対策の柱は、1)児童手当など経済的支援の強化、2)学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充、3)働き方改革の推進があげられています。出産の際に支給される出産一時金は、令和54月より42万円から50万円に引き上げられました。また、児童手当についても試案としてあげられているのが、所得制限の撤廃です。現状は年収が8333,000円を超えると所得制限にかかる可能性があります。夫婦共働きの場合、どちらか所得の多い方となるため、世帯所得ではありません。平成22年に導入された児童手当(子ども手当)、導入当初、所得制限は設けていませんでした。しかし財源確保のため、平成23年には15歳までの年少扶養親族に対する所得税の扶養控除(38万円)が廃止され、子ども手当の支給金額も年齢に応じ段階的になり、所得制限も設けられることになりました。今回、それが撤廃されることで、導入当時の制度内容に戻る形になります。

  しかし、ここで問題となっているのは財源の確保です。制限を撤廃し、なおかつ対象年齢を現行の中学卒業までから高校卒業まで範囲を拡充するとなると、数千億円から数兆円単位の財源が必要となると言われており、政府は社会保険料を増額して財源を確保する案を検討しています。

  そんな中、健康保険組合連合会は420日に主に大企業の会社員らが入る健保組合の2023年度の予算集計を発表しました。全国1,380組合を合算した経常収支が5,600億円の赤字となる見通しです。赤字幅は過去最大で、2022年度は2,805億円だったため、およそ2倍となります。赤字を見込む組合は、全体の8割ほどである1,093組合であり、医療費などの保険給付費が伸びていることに加え、高齢者医療費が大きく膨らんでいます。それに伴い、保険料率を引き上げる組合も増え、各組合が設定した保険料率の平均料率は、9.27%になる見通しです。介護と年金を合わせると、いよいよ30%になる時代はそう遠くないかもしれません。租税負担率と社会保障負担率を合計した国民負担率は、今の75歳が40歳だった1988年は37.1%だったのに対し、2023年度の見通しは46.8%となっており、所得の半分が税金や社会保障にもっていかれていることになります。負担率が増加していることを踏まえると、より賃上げの圧力が増していくことが考えられます。企業としては、頑張って賃上げを進めている分、国には税金等を正しく使ってほしいですね。

2023年4月号 新型コロナ いよいよ5類移行へ

3月13日以降、マスク着用は個人の判断が基本となりました。そして、5月8日から今の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行されます。


現在今春
診察発熱外来中心原則 一般の医療機関
ワクチン接種無料無料。今年度中に結論
入院・検査費の公費負担あり当面継続

季節性インフルエンザ
(解熱剤とタミフル処方)
新型コロナウイルス
(解熱剤と治療薬処方)

70歳未満
負担3割
最大 4450円最大 4170円
75歳以上
負担1割
最大 1480円最大 1390円

 医療費について具体的にみると、外来医療費については、ほぼインフルエンザと同じ程度と試算されています。

 コロナ治療薬は高額のため9月末までは引き続き公費負担となっていますが、仮に公費負担が無くなると3万円程度(負担3割)更に自己負担が増えることになります。入院費用についても自己負担となりますが、急な負担の増加を避けるため、9月末までは高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額する措置がとられます。

 ワクチンの無料接種は当面継続されます。5月8日から8月までは高齢者や重症化リスクの高い人が対象で、その後9月から5歳以上の全年代が対象になります(高齢者らは2回)。しかし、2024年度以降に自己負担が生じる可能性のある「定期接種」への移行が検討されています。

 また、感染対策として使用していたアクリル板などのパーテーションをこの機会に取り外すというところもあると思いますが、不要になり処分する場合、産廃業者を手配するなど労力やコストがかかります。回収してリサイクルや下取りをしてくれる業者もあるようですので、処分をする前に一度購入業者に確認すると良いかもしれません。

 コロナ禍の都内では例年、6月下旬から感染者が増え出しているため、夏は感染者が増えるとの予想もされています。一定の感染対策は当分必要だとは思いますが、「コロナ前の」ではなく、「より良い」生活・社会にしていきたい、なって欲しいです。

2023年3月号 マイナンバー活用におけるメリットを考える

政府は「マイナンバーカード」を国民に持たせることに注力しています。総務省の発表によると、令和5年1月末現在マイナンバーカードの交付枚数は全国で約7,566万枚。人口に対して60.1%が交付されている計算です。

マイナンバーカードが普及することにより、平日役所に行かなくてもコンビニで各種証明書が取得できるようになりました。また我々の業務に関連することではマイナポータル連携により、年末調整・確定申告で取得できる情報が年々増加しています。(下表参照)



 

 

 

 

 

 

 

 しかしながら、そもそも「マイナンバー」をもっと活用していくのが大切なのでは?と感じています。例として、金融機関の休眠口座(10年間取引がない預金)は毎年1,200億円発生しており管理費も膨大になっていますし、先日の新聞には「すでに亡くなった方の口座から10年以上に渡り、固定資産税が引落されていた」という記事がありました。金融機関の口座情報とマイナンバー、不動産の登記情報とマイナンバーが紐づいていればそのような無駄は起こらないでしょうし、そのような情報が相続人や税理士に開示されれば相続財産の調査もより早く行えるようになるのではないでしょうか。

 財産を残す側からすると、すべての財産がマイナンバーで紐づけされてしまうと、愛人や隠し子に対して家族に内緒で財産を残すことは難しくなるでしょう(そもそも相続税法違反になるかもしれませんが・・・)

ただ、相続する側からすれば、すべての財産が把握できるようになり、もらえるものも多くなる可能性があります。

金融機関の口座情報とマイナンバーを紐づける問題については、国民の強い反発がありなかなか進んでいない状況ですが、いざというときはメリットがあるのではないでしょうか?

2023年2月号 令和4年度確定申告 副業の確定申告はここが変わります!

2月になり、まもなく個人の確定申告の時期がやってきます。近年では様々な形での副業が盛んとなり、確定申告をされる方も増加傾向となっています。今回は令和4年分確定申告から副業の確定申告については、注意すべき点をご紹介したいと思います。

1.事業所得と雑所得の区分について
一般的に副業は雑所得と考えられますが、事業の規模・継続性等も踏まえ事業所得として申告する場合もあります。令和3年度以前はこの雑所得と事業所得どちらで申告すればよいのかという点があまり明確化されていませんでした。令和4年度確定申告からは、発表された通達に従うと「記帳・帳簿書類の保存あり」の状態であれば概ね事業所得と取り扱うこととなります。(本業に比べて収入金額が10%未満と僅少な場合や営利性がないと判断される場合は除きます)一方で、「記帳・帳簿書類の保存なし」の場合は事業所得に区分されず、概ね雑所得と取り扱うこととなります。
事業所得は雑所得と比較しますと、青色申告特別控除額や損益通算等を活用できる点ではメリットがありますので、今後どちらで申告していくのか改めて検討してみるとよいでしょう。

2.収支内訳書の添付が義務化
令和3年度の確定申告までについては、雑所得はその年中の収入金額と必要経費それぞれの合計金額及びその差額を雑所得として申告を行えば問題はありませんでした。令和4年度確定申告からは、その収入金額と必要経費の内容をまとめた収支内訳書の添付が必要となります。ただし、雑所得で申告をするすべての人が対象となるわけではなく、前々年の雑所得を生ずべき収入金額が1,000万円を超える方が対象ですので影響はそこまで大きくないかと思われます。所得ではなく収入金額ですので、せどりのような収入金額が多額になる副業をされている方は注意が必要です。

今のところ令和4年分確定申告の受付期間は令和5年2月16日~令和5年3月15日となっており、コロナウイルスによる一律的な期限の延長の情報はありません。まずは、申告をされる方は期限内に申告できるよう資料等の準備を行いましょう。個人の確定申告につきましても不明な点がありましたら、是非弊社にご相談ください。

2023年1月号 令和5年度税制改正

昨年12月16日に公表された令和5年度税制改正大綱についてはニュースや新聞等で皆様も既にご承知のことと思います。なかでも法人税の税率4~4.5%の新たな付加税(一定の制限有り)や個人所得税の1%の増加(復興税の減少と延期)が特に目についたのではないでしょうか。今月号は2022/2月号でもお知らせした相続税の改正について取り上げてみたいと思います。なお、正式な税制改正は春頃に決定する予定です。

1.生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長
私達の一番身近な生前贈与に株の贈与があります。これは世代交代の手続きの一つで前経営者の所有する株式を後継者に承継していくためのもので、その手法は事業承継税制を適用したり暦年贈与をしたりと様々です。毎期決算後に自社の株価を算出し非課税の範囲で株を移行し承継を進めておりますが、この生前に贈与した株式も、相続が発生した場合には過去3年に遡って相続財産に持ち戻して相続税の計算をすることになります。この遡る期間が3年から7年に延長になるということです。なお、この改正が決定しますと令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税から適用となります。但し、緩和措置として相続開始4年から7年の間の贈与については相続税の計算において、当該財産の価額の合計から100万円を控除する措置が取られます。会社によっては移行に相当期間を要する場合も考えられますので早めの対策を取っていく必要があります。

2.相続時精算課税制度の見直し
相続時精算課税贈与とは2500万円まで非課税で贈与でき、相続時に全て贈与財産を相続財産に加算して相続税と一体的に計算する制度です。相続時精算課税制度は暦年贈与と違い110万円の基礎控除はありませんでしたが、新たに110万円の基礎控除が設けられ110万円以下の贈与は贈与税申告が不要になりました。また、相続税の計算においても110万円以下の贈与は相続財産に加算する必要はありません。
相続時精算時課税を一旦適用すると例えば年間10万円の少額な贈与であっても申告が必要で煩雑であることから利用が伸びていませんでした。今回の改正で暦年贈与は生前贈与加算の期間が7年に延びるのに対し、精算課税制度では110万円以下の贈与財産は持ち戻す必要がないため、一部の富裕層以外は精算課税制度の方が節税できるケースが多くなるのではないかと予想されるそうです。

2022年12月号 キャッシュレス化によって現金は不要になる?

毎月、「0」が付く日は何の記念日かご存じでしょうか?「現金ゼロ(0)=キャッシュレス」で現金を使わないという意味から、毎月10日、20日、30日は「キャッシュレスの日」と制定されています。

利用されている方は多いと思いますが、キャッシュレス決済は、現金を準備する手間が省ける、決済方法によってはポイント付与やポイント還元などのメリットがあります。店舗側からすると導入費用や決済手数料のコストが掛かるというデメリットはありますが、レジ締めの時間短縮など業務の効率化、売上管理が楽になる、消費者の手持ち現金不足により機会損失の防止になるというメリットもあります。

2021年のキャッシュレス決済比率は32.5%に及び、国は2025年までに40%程度、将来的には世界最高水準の80%まで上昇させることを目指してキャッシュレス決済の推進に取り組んでいます。11月にはキャッシュレス法が施行され、2023年の1月に車検費用がキャッシュレスで支払えるようになる見込みで、他にもパスポート発給手数料や登記関連手数料、交通反則金なども順次対応していく予定です。

しかし、キャッシュレス化によって現金の流通が減っているかというと、現金の流通高は年々増加しています。ニッセイ基礎研究所が作成した資料によると、2000年には60兆円程度だったのが2016年頃に100兆円、2020年には120兆円規模になっています。

キャッシュレス

内訳を見ると、少額の硬貨の供給量は減っていますが、1万円札がとくに増えており、国民の預貯金、そして「タンス貯金」が増えていることが原因と考えられています。自宅に現金を保有する理由として一番多いのが「現金引き出しが面倒・手数料がかかる」というものでした。「タンス貯金」をいかにして世の中に出回らせ、消費に促していくかが、キャッシュレス化推進の鍵になりそうです。

2022年11月号 どうなる国民年金~保険料負担増の危機到来!?

10月は厚生年金加入者にとっては気になるニュースがありました。

1つは国民年金の支給額を将来5万円台に維持するため、厚生年金から資金を流用する案が出ました。損をするのは一部の高年金受給者で、大半の世帯は給付水準が上がるという話もありますが、サラリーマンとして毎月給与から厚生年金保険料が控除されている身にとっては気になる話です。

2つめは国民年金の保険料納付期間を現行の40年間から5年延長して45年間とする案を議論する方針が決まりました。早ければ2025年の通常国会で法改正となるようです。企業で65歳までサラリーマンを続け、厚生年金に加入する人には関係ありませんが60歳~65歳未満で個人事業者の人・無職の人は保険料負担が増えることになります。

そもそもの問題としては少子高齢化、物価高騰、国民年金の全額免除・猶予者の増加等が挙げられます。人生100年時代、65歳まで働くのが当たり前となりそうですね。

公的年金加入者数の推移

参考:厚生労働省年金局 令和3年度の国民年金の加入・保険料納付状況(公的年金加入者数の推移)

2022年10月号 インボイス制度いよいよ1年後スタート!準備はできていますか??

 令和4年10月となりまして、来年令和5年10月よりスタートのインボイス制度まで残り1年を切ることとなりました。また、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者(インボイスの発行事業者)の登録を受ける場合には、原則として令和5年3月31日までに提出する必要があり、登録申請手続きの期限としては残り半年ないことになります。自社のみならず、取引先に令和5年10月1日から適格請求書発行事業者として登録をした上で取引を継続したい場合には、令和5年3月31日までに対応が原則必要となりますので注意しましょう。

 では、世間のインボイス制度の対応状況はどのようになっているのでしょうか。令和4年9月8日に日本商工会議所ならびに東京商工会議所は「『消費税インボイス制度』と『バックオフィス業務のデジタル化』等に関する実態調査」の結果を取りまとめて発表しました。気になる点を取り上げてみましょう。(参考:https://www.jcci.or.jp/20220908kekka.pdf

①インボイス発行事業者の登録申請状況

 小規模な事業者ほど登録申請は進んでおらず、売上高1000万以下の事業者としてはその内の1.6%程度が登録申請済みということで、まだまだ登録が進んでいないのが現状のようです。また、「取引先から要請があれば検討する」という事業者が24.7%と、要請がなければこのままでという事業者や、「制度内容を理解しておらず、検討していない」という事業者が21.2%と多くを占めていることから、企業としても早いうちに小規模事業者への対応を進めていく必要があります。

②インボイス制度導入に向けた課題

 インボイス制度導入に向けた課題としては「制度が複雑でよくわからない」が約5割となっており、そもそもの制度理解が大きな課題となっているようです。結果として登録申請も進まないという状況になっているのかもしれません。他にも課題は様々ですが、いずれにしても令和5年10月よりインボイス制度がスタートすることになりますので、改めて自社の課題・対応スケジュールを確認してはいかがでしょうか。

2022年9月号 手形交換所廃止~そもそも手形交換所とは?~

 7月下旬に手形交換所の業務が2022年11月に終了するというニュースがありました。交換業務については電子交換所に移管するとの事ですが、実際の利用者の手続きには特段変更はなく、紙の手形もこれまで通り利用ができるようです。私たちにはあまり馴染みのないものですが、いったいどういう仕組みなのでしょうか。

 銀行には、主に企業を中心とした顧客から毎日大量の手形が持ち込まれます。手形の支払側も受取側も金融機関が同一であれば、金融機関側は口座間の残高移動によって処理をすることが出来ます。しかし、決済が全国的に行われるため、通常は一致しないことが普通です。そこで、同じ地域内の金融機関が手形交換所に一定の時間にこれらの手形類を持ち寄り、お互いの銀行が支払うべき手形類を相互に交換します。持ち帰り手形と持ち出し手形の差額は、各金融機関が日本銀行に有する当座勘定の間で振替処理がされます。こうした決済交換を行う場所が手形交換所になります。

 今年の11月以降も紙の手形を利用することはできますが、経済産業省は2026年を目途に紙の手形について廃止を通達し、現金振り込みや電子手形への移行を呼び掛けています。紙の手形は、紙代・印刷代・郵送代・保管をしておくための費用などがかかり、紛失してしまうリスクもあります。また、手形金額に応じ印紙税も課税されていきます。電子手形の場合、そういった費用が無くなります。受取側は、支払期日に自動入金されるため取立失念リスク、紛失・盗難リスクが解消されます。2013年にできた「でんさい」の利用登録者数は昨今伸び悩んでいましたが、コロナ禍で再び見直され、増加傾向にあります。

 「手形」であれ、「でんさい」であれ大手企業と取引のある中小企業は、大手企業の判断に振り回される形になります。紙の手形が廃止になり、電子手形になったとしても支払いサイト、入金サイトは変わりませんので、引き続き資金繰りに気を付けていかなければなりませんね。

2022年8月号 坊主丸儲けは一部の寺社仏閣だけ?

このところ、宗教法人に対するニュースが増えていますね。

昔から「坊主丸儲け」という言葉があるように、一般的に宗教法人は法人税、消費税、固定資産税等々が課税されません。ただし、宗教法人が行う事業はすべて課税されないのか?というとそうではありません。「本来の宗教活動」に対して行う事業は課税されませんが、法人税法では収益事業として34種類の事業が挙げられています。(物品販売業、不動産貸付業、席貸業など)
具体的な例としては、駐車場の貸付、結婚式後の披露宴での席貸しや飲食物の提供などです。
物品販売の中でも、お守りやおみくじの販売は仕入値からすると利益が出ているようにも思われますが、実質的な喜捨金と認められるような場合は収益事業ではありません。また、結婚式場の経営も神前式など本来の宗教活動の一部と認められるものは収益事業ではありません。ちなみに、お賽銭は信仰心に基づいた寄付の一種であると判断されるため、課税されません。

そもそも課税される法人は営利目的で設立されており、宗教法人は「教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする団体」とされていますので、設立の目的が根本的に異なります。
例えば、東京都港区にある増上寺はおよそ24,000坪(約79,200平米)と言われていますが、この土地に対して営利目的の法人と同様に固定資産税が課税されると運営が立ち行かなくなる可能性がありますね。将来安心してお墓に入るためには宗教法人が優遇されているのは仕方がないかもしれません。

ただ、現在の税法が未来永劫続くわけではありません。この機会によりよい税法について考えてみてはいかがでしょうか。


2022年7月号 外れ馬券は経費にならない!?税務上の考え方

今回は最近話題になりました、とあるお笑い芸人が馬券を的中させたはいいものの税務調査が入り、多額の追徴課税を取られてしまった件から話を広げていきたいと思います。

 まず今回の件は、競馬の払戻金が一時所得なのか雑所得なのかという点が話の発端になります。過去の事例で、雑所得として処理をすることが認められた競馬の払戻金の事例もあるのですが、全競馬場のほぼ全レースの馬券を購入している場合や、年間で数億円単位を購入している場合なので、一時所得として扱われるのが原則的な考え方です。税務的な観点からみると雑所得は、購入した馬券のうち外れた馬券も含めて経費として扱うことができると考えられるため、上記のように頻繁に競馬を行い高額な当たり馬券を手にしたような場合は、一時所得として処理するよりも課税される金額は少なくなる可能性が高いと言えます。

 では今回のケースではどちらに該当するのでしょうか。現行法令では雑所得として取り扱うのは難しいという否定的な意見が多いように感じます。今後は東京国税不服審判所で改めて調査され、裁決が行われるためどのような裁決となるのか注目したいところです。

 それでは、今後争う場となる国税不服審判所とは何でしょうか。国税不服審判所とは、国税局や税務署から分離された別の機関であり、納税者と税務署等の双方の主張を聞き、必要があれば自ら調査を行って、公正な第三者的立場で審理をした上で裁決を行います。国税不服審判所の裁決は行政としての最終判断となるため、納税者側の意見が認められるような裁決となった場合に税務署等は、不服があっても訴訟を提起することはできません。ただ、2020年の結果をみると納税者側の意見がなんらかの形で認められたのは10%程度となっており、納税者側の意見が認められる方がまれな状況となっています。納税者側は、裁決に不服がある場合は訴訟を提起することができ、最高裁まで争うことも可能ですが、長い年月や高額な費用がかかることが想定されます。

 今回の競馬のケースでは問題提起の意味合いもあるため、最終的な判断がされるのは国税不服審判所ではなく、裁判所の判断にまでもつれ数年後になることも考えられますが、どちらにしても一時所得・雑所得の判断に困らない具体的な判断基準を示してもらいたいところです。

2022年6月号  マイナポイント付与開始~健康保険証と口座登録~

 平成28年1月に普及が始まったマイナンバーカードですが、もう6年半が経過しようとしています。しかし令和4年5月1日時点の普及率は、44.0%と半数に満たない状況です。政府としては、2022年度末にほぼ全国民への普及を目指しています。かねてから囁かれていた、マイナポイント事業の第2段の申し込みが6月30日からスタートします。マイナンバーカードの取得者は、①健康保険証、②公的給付を受け取る預貯金口座をマイナンバーカードに登録すると、それぞれ7,500円相当のポイントが付与され、両方登録すれば、1万5,000円相当分を取得することが可能です。ポイントは電子マネーやスマートフォンのORコード決済で使うことができ、マイナンバーカードを9月末までに申請した人がポイントを受け取れる対象者となります。なお、既にマイナンバーカードを取得している人も対象です。政府は既にカードの新規取得者に最大5,000円分のポイント付与を今年の1月1日より開始していますが、今回の保険証と口座登録も含めれば最大で計2万円分のポイントを得ることが可能です。登録は、マイナポータルより行います。

 一方で、大きな課題も。。。マイナンバーカードと健康保険証の機能を併せ持つ「マイナ保険証」を利用することで患者が窓口で支払う医療費が増えるといった問題が発生しています。マイナ保険証を使用すれば、医師や薬剤師が患者の健康診断の結果や処方歴などを一元的に把握でき、複数の医療機関の診察券が1枚に集約されるなどのメリットがあります。しかし、医療機関がマイナ保険証を導入するには、コストも手間もかかるため、導入率はいまだ1割程度です。そこで、マイナ保険証を導入した医療機関は、診療報酬を引き上げることにしました。そのしわ寄せは利用者にきているのが現状です。

 診療費というのは、点数制というのもあり、素人には金額がわかりにくいものとなっています。お会計時に、金額に文句を言う人もいないのではないでしょうか。もしマイナ保険証を使わずに、従来の保険証を出したとしても、マイナ保険証対応の医療機関であればその場合にも、多少利用者に負担がかかるようです。どちらにせよ支払うことになるのであれば、一層の事マイナンバーカードを取得されていない方は、取得したほうがいいのかもしれませんね。

2022年5月号  アルコールチェック義務化拡大!

 2022年4月1日に道路交通法が改正され、乗車定員が11名以上の自動車を1台以上または乗車定員に限らず5台以上を使用する事業所の運転者に対して、酒気帯びの有無を確認するアルコールチェックが義務化されました。
 2021年6月に千葉県八街市で下校中の小学生の列にトラックが衝突し、5名が死傷する交通事故が発生したこともあり、飲酒運転は社会的に大きな問題となっています。業務上、自動車などを運転する従業員がいる企業は、運転者について厳重な管理が必須となります。

アルコールチェックの方法は2段階で義務化されます。
2022年4月から義務化される内容は、以下の2点です。
①酒気帯びの有無を目視にて確認(事業所の安全運転管理者が運転の前後に実施)
②確認内容を記録したデータ等を1年間保存すること

2022年10月から義務化される内容は、以下の2点です。
①アルコール検知器を使用しての酒気帯び有無の確認
②アルコール検知器を常に使える状態にしておくこと

【スケジュール】

図:スケジュール

 また、アルコールチェックは、「安全運転管理者」が実施する必要があります。
「安全運転管理者」は、事業所で使用する自動車の乗車定員が11名以上の自動車を1台以上、または乗車定員に限らず5台以上のときに選任が必要です。選任後15日以内に事業所の管轄の警察署への届出と、毎年1回の講習が義務づけられています。

 ちなみに、アルコールチェックを実施しなかったときの、直接的な罰則はありません。
ただしアルコールチェックを怠り、酒気帯びの運転になっているときは道路交通法違反になり、運転者のみだけでなく使用者(安全運転管理者、その他自動車を直接管理する者など含む)に3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。違反に使用された自動車は6ヶ月以内の範囲で使用できなくなることもあります。

 交通事故を起こした企業は「刑事上の責任」「行政上の責任」「民事上の責任」「社会的責任」が問われ、大きな代償を支払います。そうならないよう、事前に対策を進めていきましょう。

2022年4月号  災害へ備えましょう!  事業継続力強化計画認定制度とは

 先月は3月ということで東日本大震災を思い返すことや、また3月16日(水)に福島県沖を震源地とする大きな地震もあったことで、地震などの災害について改めて考える方も多かったのではないでしょうか。そこで今回は事業継続力強化計画認定制度についてご紹介をしたいと思います。


 まず事業継続力強化計画認定制度とはいったいなんでしょうか。これは、中小企業が防災や減災に関する事前対策の計画を経済産業大臣に申請し認定をうけることで、災害に備えるだけでなく税制面などで優遇される制度となります。本制度は2019年7月からスタートしており、制度の開始からは数年経過しています。2022年2月時点で、認定をうけた企業は約39,000社となっており、多くの企業が認定をうけている状態です。では認定をうけることでどんなメリットがあるのでしょうか。


【メリット1】国のお墨付きがもらえる

 認定をうけることで、認定ロゴマークの使用許可や、認定企業として中小企業庁のHP上に会社名が公表されます。災害対策への意識が高い企業としてアピールすることが可能になります。

【メリット2】対象の防災・減災設備が税制優遇される

 自家発電機、制震・免震ラック、防火シャッターなど防災・減災に対する設備の購入の際に特別償却20%をうけることができます。対象設備や購入金額など条件があるのでその点は注意が必要です。

【メリット3】補助金の審査で加点措置あり

 認定をうけることで、補助金の審査で加点され採択されやすくなります。
 加点される補助金として代表的な例としましては、ものづくり補助金があげられます。

【メリット4】金融支援

 日本政策金融公庫から、認定を受けた事業者が行う防災・減災の設備投資に必要な資金については低利融資をうけることができます。
 また信用保証協会から追加保証や保証枠の拡大を受けることができます。


 認定をうけることのメリットをあげさせていただきましたが、やはり一番重要なのは災害時にどのような対応をするかを予め考えておくということです。災害といっても地震や水害、また今現在も蔓延しているコロナウイルスのような感染症のような災害もあります。様々なことに備え、事業の継続性を高めていきたいですね。事業継続力強化認定制度に興味を持たれましたら各担当にお声がけください。

2022年3月号  インボイス制度続報!!免税事業者取引と独禁法・下請法について

 財務省や公正取引委員会等は、同省等のウェブサイトに「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を公表しました。令和5年10月より始まる消費税のインボイス制度。免税事業者からの仕入れには仕入税額控除が制限されるため、買手が消費税相当額を仕入先に支払わないことや、仕入先に課税事業者への転換を求めたにも関わらず取引価格を据え置くことなどを懸念する声もあります。しかし、そうした買手の行為は独占禁止法や下請法、建設業法で問題となることがあり、今回、免税事業者との取引に係る独占禁止法や下請法等の考え方等がQ&A形式で示されました。

 基本的に事業者がどのような条件で取引するかについては、取引当事者間の自主的な判断に委ねられます。しかし、免税事業者等の小規模事業者は、売上先の事業者との間で取引条件について情報量や交渉力の面で格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすい場合も想定されます。皆様が取引をされている外注先などの取引先についても、いまだにインボイス制度をご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。世間でもまだインボイス制度の事は周知されていないように感じます。自己の取引上の地位が相手方よりも優位である場合に、その地位を利用して、相手方に不当に不利益を与えることは、「優越的地位の濫用」として、独占禁止法上問題となるおそれがあります。インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すこと自体が、直ちに問題となるものではありませんが、見直しに当たっては、「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。優越的地位の濫用には以下の項目が考え方としてあげられます。

1 取引対価の引下げ
2 商品・役務の成果物の受領拒否、返品
3 協賛金等の負担の要請等
4 購入・利用強制
5 取引の停止

 ポイントは、双方の話し合いのうえで取引対価の見直しを行う場合には独占禁止法上の問題にはならないという点です。ただし、話し合いといっても形式的なものにすぎず、著しく低い取引価格を設定した場合には問題となります。インボイス制度が始まるまで、あと1年7ヶ月です。

 2月に入り、適格請求書発行事業者の登録番号通知書が続々とお手元に届いているかと思います。取引先への説明、交渉の際に通知書を用いてお話をしてみてはいかがでしょうか。

2022年2月号  相続税・贈与税の改正はいつ?

 日本では贈与税の方が相続税より高い税率が設定されているため、相続により資産の移転を行う方が一般的です。しかし、高齢化・長寿命化に伴い高齢世代に資産が偏在し、相続による資産の世代間移転の時期が高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にあります。一方で、相当に高額な相続財産を有する層にとっては、毎年110万円を贈与し続けて相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転しているのが現状です。そういった富裕層に限らず、若年世代への資産移転を促し、経済が活性化することを期待し、相続税・贈与税の改正が検討されています。

<想定される改正内容>
 ①持ち戻し期間が3年からもっと長く?
 ②孫に対する贈与も持ち戻しの対象に?
 ③110万円以上の贈与をしても贈与税は課税しない?

①現在の税制では、3年内加算のルールというものが存在します。これは、生前贈与をしてから3年以内に亡くなった場合、相続税の計算上、3年以内に贈与した財産も加算して相続税を計算する、というルールです。贈与税がかからないと思って110万円を毎年贈与していても、亡くなる前3年分については相続税の計算に含める必要があります。

 日本では、この持ち戻し期間は3年間なのですが、イギリス7年、ドイツ10年、フランス15年、アメリカは一生涯と日本より長いのです。この期間が短い方が贈与税の非課税枠を長く活用できるため、日本は優遇されているかもしれませんが、改正により3年より長くなるかもしれません。

②先ほどの3年内加算のルールの対象者は、ざっくりいうと、相続人に対する贈与に限定されています。つまり、親が亡くなり、子が相続人となるケースでは親から孫や曾孫に対する贈与は、原則として3年内加算のルールが適用されません。こうした節税を防ぐ改正が行われる可能性があります。

③相続税・贈与税改正の目的は高齢者の資産を早く若者へ移転することです。そのため、①の持ち戻し期間を長くする代わりに、贈与税の非課税枠が拡大されるかもしれません。

 昨年12月に『令和4年度税制改正大綱』が発表されましたが、具体的な改正はありませんでした。そのため2023年までは現行の税制が適用されます。相続税・贈与税は決して一部の富裕層だけの話ではありません。これを機に一度、家族で話をしてみてはいかがでしょうか?

2022年1月号  ワクチン接種証明アプリの活用は?

 2021年12月20日からデジタル庁の「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」が利用可能となりました。登録を行うには、必ずマイナンバーカードが必要です。未取得の方はマイナンバーカードの申し込みから必要となります。また、海外に行く機会のある人はパスポートも必要です。実際に登録を行ってみると4桁の暗証番号さえ忘れていなければ、数分で簡単に登録ができました。すでに登録をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 接種情報が正しく表示されないといった不具合や旧姓併記のマイナンバーカードが未対応などまだシステム対応が必要な部分はあるようです。しかし、コロナで経済的な打撃を受けた飲食業や観光業などでは接種証明書アプリを利用した事業活動には、様々な期待が寄せられています。

 海外では様々な施設を利用するときに、ワクチン接種証明書や陰性証明書の提示が義務づけられた代わりに、顧客が戻り経済活動が活性化された事例もあります。

 日本で接種証明書を事業活用するにはどうしたらよいでしょうか?

 政府は、ワクチン接種証明書の事業活用について以下のような考え方を示しています。海外と比べ、罰則規定は設けない方針となっています。

①民間が提供するサービスに対しては、ワクチン接種証明書の活用は幅広く活用が認められる

②一方でワクチン接種証明書を提示しない人に対して、法外な料金を請求するなどは許されない

③自治体が管理しているワクチン接種証明データを利用したアプリの開発(12/20利用開始)

<参考:新型コロナウイルス感染症予防接種証明書のデジタル化について | 厚生労働省>

 日本政府はワクチン接種証明書の活用について、民間での活用を幅広く認めています。一方で、ワクチン接種証明書を提示しない人に対する法外な請求など、「ワクチン接種証明書を利用しない人に対する不利益」は与えないよう、配慮を求めています。よってワクチン接種証明書を事業活用する場合は、料金割引や特典の付与など、証明書を提示する人が得をするような仕組みの構築がおすすめです。

 すでに一部の商業施設では、接種証明書の提示で値引きや特典付与を実施しているところもあります。利用者も混雑する時間をさけたり滞在時間をなるべく減らすなどの行動は必要なことにかわりありません。年末には、オミクロン株の市中感染が確認され、一部の小売店では年始営業を見合わせるところもありました。事業者側も集客だけを考えるのではなく、密をさけるための様々な工夫をしなくてはなりません。

 2020年から21年は、テレワークやWeb会議が普及しました。2022年は、これまで同様に感染予防対策を行ったうえで、接種証明書アプリなどをうまく活用し事業活動が活発になることを願います。

2021年12月号 大企業と中小企業が共に成長できる持続可能な関係を構築するために

 さっそくですが、パートナーシップ構築宣言というものをご存じでしょうか。パートナーシップ構築宣言とは昨年2020年から開始された取り組みで、取引先とのパートナーシップを強化するなど新たな共存共栄関係の構築を企業の代表者名で宣言するものです。大きくわけて下記の2点について取り組むことを宣言することとなります。

 ①サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携
 ②振興基準の遵守

 ②の振興基準の遵守とは、親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく振興基準)を遵守し、取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商習慣の是正に積極的に取り組むことを意味します。もう少し具体的に言うと、価格の決定方法や支払条件等において下請事業者側が不利にならないよう取り組むことを指します。このように聞くとパートナーシップ構築宣言は大企業のみが対象かと思われるかもしれませんが、あらゆる規模・業種の企業及び個人事業主が対象となっています。宣言をすることでのメリットは3点あげられます。

【メリット1】取引先との共存共栄の関係を築こうとする会社(ホワイト企業)であることをアピール
 宣言した内容は公式ポータルサイトにも掲載され、宣言をした企業はパートナーシップ構築宣言のロゴマークを使用することができます。

【メリット2】一部の補助金で加点措置
 事業再構築補助金、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金などで加点措置を受けることができます。

【メリット3】宣言の取り組みを実践することでSDGsも同時達成することに
 企業活動として社会的にも求められているSDGsに対して、宣言をすることで取り組んでいることになります。

 2021年11月の時点では約3,800社が宣言をし登録されていますが、資本金が3億円を超える企業の登録は約390社と多くはありません。結局のところ中小企業の取引先である大企業が宣言し、取り組まなければ中小企業としては苦しいままです。中小企業が積極的に取り組み、大企業に対してパートナーシップ構築宣言に取り組んでいないことが変だと感じさせることが今後必要になってくるかもしれません。まずは自社が取り組むことができるか検討してみてはいかがでしょうか。

2021年11月号      変動所得と臨時所得 ~プロ野球選手の確定申告って・・・?~

  急に肌寒い日が多くなり、今年もわずか残り2ヶ月となりました。12月に入れば、毎年経理の皆様が苦労されている年末調整業務がやってきますね。年が明けると、私たち税理士にとっては繁忙期にあたる確定申告の時期が近づいてきます。今回は、そんな確定申告のお話をしたいと思います。

先月の10月11日にプロ野球ドラフト会議が行われました。野球に関心がある方は、年に1度のイベントだったのではないでしょうか。ドラフト会議後に、いざ入団となりますと「契約金」が球団から支払われることになります。選手によっては億単位の契約金が支払われることもあります。では、この契約金は何所得になるのでしょうか。よく給与所得と勘違いする方がいらっしゃいますが、野球選手は個人事業主扱いとなりますので、事業所得に該当し確定申告の対象となります。日本の所得税率は、所得が大きければ大きいほど税率が高くなり、税額が大きくなる仕組みです。例えば、契約金が1億円でその他の収入・経費がなかったものとします。その場合、所得税法の最高税率45%が適用され、所得税額は4,500万円となります。1億円もらったとしても約半分が税金として持っていかれてしまいます。そこで、所得税法では急激な変化が起きた時に税額が極端にならないように調整する「平均課税制度」というものがあります。平均課税制度を使って税額計算をした場合、一般的な方法により計算した所得税額より減額が見込まれます。しかし、この平均課税制度、何でもかんでも適用が出来るわけではありません。「変動所得」と「臨時所得」に該当するものが対象となります。

【変動所得】・・・事業所得や雑所得のうち、下記に該当するもので年々の変動の著しい所得を言います。
①漁獲やのりの採取による所得、はまち・まだい・ひらめ・かき・うなぎ・ほたて貝・真珠・真珠貝の養殖による所得
②著作権の使用料による所得
③原稿料、作曲料の報酬

【臨時所得】・・・簡単にいうと下記のようなものになります。

①3年以上の期間、プロ野球選手のように、一定の者に専属して役務の提供を約すること等により一時に受ける契約金で、その金額がその契約による報酬の年額の2倍相当額以上であるものに係る所得
②3年以上の期間、他人に不動産等を使用させることを約することにより一時に受ける権利金等の対価で、これらの資産の使用料年額の2倍以上であるものに係る所得 etc...

プロ野球選手の契約金は臨時所得に該当します。また、上記の変動所得や臨時所得に該当するものすべてが対象になるわけではなく、そこからさらに一定の要件を満たしたものが、「平均課税制度」の対象となります。計算方法は難しいお話になりますので割愛させていただきますが、ご興味のある方はインターネットで検索してみてください。

2021年10月号      変わりゆく税制 ~森林環境税・令和6年度から導入~

  毎年、税制改正要望が出され、税法はどんどん変わっていきます。法律は時代変化に合わせて変わっていくものですが、私たちに身近な「住民税」に関連して、すでに導入が決定している「森林環境税」についてご存じでしょうか?
「森林環境税」とは令和6年度から国内に住所のある個人に対して課税される国税であり、市町村において、個人住民税均等割と併せて1人年額1,000円が徴収されます。年間620億円の税収を見込んでおり、その税収の全額が、国によって「森林環境譲与税」として都道府県・市町村へ譲与されます。

  都道府県・市町村は「森林環境譲与税」の使い道を公表しなければなりません。ちなみに神奈川県が公表している『森林環境譲与税に関する使途』によると、令和元年度は森林環境譲与税約97百万円のうち、約52百万円(約53.7%)は使われずに基金に積立されたようです。また、自治体によって名称は異なりますが、37の府県と横浜市では、既に独自の森林環境税が導入され、徴収されています。令和6年度から国税の「森林環境税」の徴収が始まると、国と県で二重課税になってしまうのは少し気になりますね。
最後になりますが、結局は増税か?と思われたかもしれませんが、東日本大震災の復興対策として年間1,000円住民税に上乗せされていたもの(2014年から10年間)が終了する予定ですので、住民税が増えるということにはならないので安心してください。

(参考 総務省ホームページ)


2021年9月号 <新型コロナ> 濃厚接触者の休業補償は?

  新型コロナウイルスの感染拡大長期化、自宅療養者の増加に伴い、濃厚接触者と判断される人も増えてきています。濃厚接触者に該当すると保健所の指示に従ってPCR検査を受け、検査結果にかかわらず14日間の健康観察が指示されます。健康観察期間は、不要不急の外出や通勤通学を控えることになっています。もし従業員が濃厚接触者になって仕事を休んだら、休業補償はどのようになるのでしょうか? 新型コロナの濃厚接触者に関する休業補償について調べてみたところ、濃厚接触者の健康観察期間の自宅待機は要請であるため、個別の状況や会社の就業規則などにより判断がわかれるそうです。 


 会社側から、濃厚接触者になったことを理由に休むよう指示された場合には、給料または休業手当を受け取れるのが、基本的な考え方です。例えば、コロナの症状がなく仕事ができる状態で、パソコンや通信環境などを整えてもらえば自宅でも仕事ができるものの、会社側の都合で在宅勤務が認められないケースや、他の従業員に感染させないための安全配慮の観点から休業を指示するケースが該当します。また「37.5度以上の発熱があったら休業すること」「咳が出ているときは休業すること」など、一定の症状を理由に会社側が定めた制度で休業を命じた場合も、原則として「使用者の責」による休業にあたります。この場合も、休業手当の対象になります。

一方で、従業員の判断で仕事を休む場合には、休業手当の対象にはなりません。風邪で休むのと同じように、自己都合での欠勤として扱われます。当然、年次有給休暇を利用する方法もあります。発熱がある、咳がでている、頭痛がするなどの症状があれば、被用者保険に加入されている方であれば、体調不良(※)で4日以上連続した休業した場合、各保険者から傷病手当金が支給されます。これは新型コロナに限らず病気やケガで仕事を休んだときに、おおよその給料(標準報酬月額)の3分の2相当の金額を、日割りで受け取れる制度です。 (※補足:無症状でもPCR検査で陽性判定の場合は傷病手当金の対象になります。)

あくまで健康観察期間は、保健所からの要請ではありますが、会社側も感染の可能性のある従業員を出社させるわけにもいきません。厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A」を参考に、会社での方針を決めておくとよいでしょう。また、同居家族が新型コロナ感染者となり自宅療養となったケースでは、濃厚接触者の健康観察期間が長期になることもあります。急な休業に備えた業務の見直しや体制づくりを行いましょう。

参考:日本渡航医学会と日本産業衛生学会の共同文書「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」


2021年8月号 最大幅の引き上げ 変わる最低賃金

 オリンピックが開幕されたとはいえコロナウイルスの影響はいまだ大きく、東京都では緊急事態宣言が発令されており、中々通常の生活が取り戻せない日々が続いていますが、そんな中で事業者側からすると負担が増加する案が決定されましたがご存じでしょうか。
 7月14日に厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会において、2021年度の最低賃金を全国平均で28円を目安に引き上げ、時給930円とすることが決定されました。(現在の全国平均は902円)最低賃金については、16年度~19年度では3%ずつ引き上げ、昨年20年度についてはコロナウイルスの影響もあり結果としては0.1%増と微増となっていました。しかし今回は3.1%増と過去最大の上げ幅となりました。今回の決定をもとに各都道府県が最終的に最低賃金の金額を決定するため、まだ最低賃金の引き上げ金額が確定したわけではありませんが、例えば東京都及び隣接する県は目標の28円引き上げられると以下のように変化することとなります。


現 在

増加後

埼玉県

  928円

  956円

千葉県

  925円

  953円

東京都

1,013円

1,041円

神奈川県

1,012円

1,040円

 最低賃金は企業が労働者に支払わなければいけない最低限の時給であり、違反企業には最低賃金法の50万円以下の罰則等が科される可能性があります。今回の最低賃金の変更は10月ごろから適用されるため、現状最低賃金ギリギリの金額設定になっている場合は注意が必要です。また、政府の政策として「全国加重平均1,000円」をあげていることからも、今後も継続して最低賃金の引き上げがあることを見越して対応を検討する必要があるでしょう。
 支払う給与等の金額が増えることは企業にとっては負担が増えることになりますが、要件を満たせば所得拡大促進税制によって税額控除をうけることができるなどの面もあります。今回の最低賃金引き上げに合わせて、中長期的な目線で自社の賃上げについてどのように対応していくのか検討してみてはいかがでしょうか。


2021年7月号 75歳以上の医療費の窓口負担 2割に引き上げ

 今年の6月に一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が可決、成立しました。現行の窓口負担割合は、以下のようになっています。

  • 70歳未満の者は、3割負担。6歳(義務教育就学前)未満の者は2割。
  • 70歳~74歳までの者は、2割。※
  • 75歳以上の者は、1割。※
※単身で年収383万円以上の者(現役並み所得者)は、3割負担

今回、改正が加わる部分は、75歳以上の方の負担割合です。単身の場合、年収が383万円未満の方の窓口負担割合は、一律1割でしたが、ここで新たに基準を1つ設けることになりました。年金を含む年収が200万円以上(単身世帯)の方については、窓口負担割合が1割から2割に引き上げられます。厚生労働省の試算によると、2割負担となる対象者は約370万人とされ、現役世代の負担が大幅に減少されると見込んでいるようです。引き上げ時期は、2022年度後半を予定しています。人口の多い団塊の世代が後期高齢者になり始める2022年以降、医療費が急増すると見込まれ、財源を賄う現役世代の保険料負担を抑えるのが狙いです。なお、引き上げ後3年間は、窓口で払う増加額が月最大3,000円となるように激変緩和措置が設けられます。
 また、関連法案では、国民健康保険に加入する未就学児の保険料軽減措置や、育児休業中の社会保険料免除対象の拡充なども盛り込まれました。
自営業者など国民健康保険に加入する家庭の小学校入学前の子どもの保険料について、半額にすることを決めました。一般の会社員が加入する健康保険では、扶養する子どもの保険料はかかりませんが、国保は年齢に関係なく子どもを含め全員が保険料負担の対象となります。金額は居住する市町村によって異なりますが、子どもの保険料も年間で数万円程度かかります。
育児休業中の社会保険料については、一定の手続きをすれば保険料の免除が受けられます。今までは、月末時点で育児休業を取得している場合には、当月分の保険料が免除される一方、月途中に短期間の育児休業を取得した場合には保険料が免除されないという不公平が生じていました。そこで、取得のタイミングによらず月内に2週間以上の育児休業を取得した場合にも、当該月の保険料を免除することが出来るように見直しがされました。
 おおまかな改正点としては、以上になりますが、改正懸念事項として、窓口負担増により高齢者の受診控えがあげられているようです。私としては、市販薬の使用が増え、処方薬の飲み残し問題が改善するきっかけになってくれればいいなと思っています。

  毎年、税制改正要望が出され、税法はどんどん変わっていきます。法律は時代変化に合わせて変わっていくものですが、私たちに身近な「住民税」に関連して、すでに導入が決定している「森林環境税」についてご存じでしょうか?
「森林環境税」とは令和6年度から国内に住所のある個人に対して課税される国税であり、市町村において、個人住民税均等割と併せて1人年額1,000円が徴収されます。年間620億円の税収を見込んでおり、その税収の全額が、国によって「森林環境譲与税」として都道府県・市町村へ譲与されます。

2021年6月号 デジタル庁創設によりさらなるデジタル化に期待

 今年9月にデジタル庁を創設することなどを盛り込んだ「デジタル改革関連法」が参議院本会議で可決・成立しました。これにより、マイナンバーカードと健康保険証、運転免許証との一体化など、誰もがデジタル化の恩恵を受けることのできる社会となっていくと思われます。

年末調整についてもデジタル化が進んでいます。年末調整で保険料控除を受ける場合、「PXまいポータル」をご利用の関与先様については、従業員は保険会社から郵送された書面(保険料控除証明書)をもとにパソコンやスマホから保険料等を入力します。従業員は保険料控除申告書を紙で提出しないので、企業としては紙で保管する必要がありません。今後はさらにマイナンバーカード・マイナポータルを利用して、複数の保険会社の証明書等のデータを一括取得できるようになります。従業員としては書面から保険料等を入力する必要もなく、企業としては書面も保管する必要がなくなります。(下図参照)

マイナポータルを活用した年末調整及び所得税確定申告の簡便化のイメージ

現時点ではすべての控除証明書等がマイナポータル連携できるわけではありませんが、国税庁のホームページにマイナポータル連携が可能な控除証明書等発行主体の一覧が公開されています。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/list.htm

 すでにマイナポータルにより、子育て・介護をはじめとする行政手続きの検索やオンライン申請や、日本年金機構のねんきんネットとの連携ができるようになっています。まだマイナンバーカードをお持ちでない方は早めに取得し、さらに進むデジタル化を有効に活用していきましょう。

2021年5号 健康保険組合の8割近くが赤字に・ 

 422日に健康保険組合連合会(健保連)より健康保険組合の8割近くが令和3年度の収支予算で赤字を見込んでいると発表されました。新聞記事によると新型コロナの影響によって、健康保険料の財源が十分に確保できなくなり令和3年度は全体で6700億円、令和4年度は9400億円の赤字になる見込みのようです。健康保険組合の平均の保険料率は平成20年のリーマン・ショック後で見ると、平成21年度の745%から上昇傾向で、今回の令和3年度予算では923%と過去最高を記録しました。急激な負担増を避けるため、積み立てた貯金を取り崩してしのぐ組合もあるようですが、料率を引き上げる組合が今後増える可能性があります。

 また、加入事業所の約8割が中小企業である協会けんぽも赤字構造が続いており健康保険料は上がり続けています。昭和22年度に3.6%だった保険料は令和3年度には健康保険料10%に加えて介護保険料が1.80%になりました。

 保険料率だけではなく、今後短時間労働者への社会保険適用拡大も決まっており従業員を雇用する企業にとって社会保険料の負担増加は避けられなくなってきています。
    (参考:社会保険適用拡大の変更点)

  • 令和410月~ 企業規模要件が被保険者数100人超規模に引き下げ、雇用期間要件の撤廃
  • 令和610月~ 企業規模要件が被保険者数 50人超規模に引き下げ


被保険者の意識改革も必要

 健康保険料等の社会保険料の計算の基礎となる標準報酬月額は、4月から6月の給与(手当等を含む)をもとに計算します。4月から6月の残業(残業手当)が大きく影響します。そのため、従業員からすると、定時改定での保険料の増減は気にしても、3月分から保険料率が上昇していることには気づきにくいものかもしれません。

 おそらく、今回コロナによる緊急事態宣言の影響で4月から6月の給与や残業が減るなど報酬低下の影響もあって、等級が下がる被保険者が多くなることが予測されます。中には「今年は、保険料の負担が減る。」と考える方もいるかもしれません。しかし、社会保険のしくみを理解し、これまで以上に私たち一人一人の医療費が増加しないように健康維持や適切な医療機関へのかかり方、ジェネリック医薬品を利用するなど取り組まなくては、将来的な負担は増え続けてしまうと意識しなくてはいけません。


2021年4月号 DXを促進すると税優遇される? そもそもDXとは・・

 昨今DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を目にする又は聞くことが増えました。2018年の経済産業省が発表したDXレポートでも、DXが実現できない場合2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)を上げており、DXを推進するために税制改正の検討も進んでおります。今回はそもそもDXって何?という点とDXに絡んだ税制改正についてふれたいと思います。
 冒頭でもふれましたがDXとは、デジタルトランスフォーメーションの略です。英語にすると、Digital TransformationなのでDTでは?と思うかもしれませんが、TransをXと略すことがあることからDXとなっています。そもそもは2004年にスウェーデンのウメオ大学の教授によって提唱された概念です。その中でのDXとは「進化し続けるテクノロジーを活用することで、人々の生活を豊かにし変革すること」というもの。つまり、DXが実現できないということは、「革新的なテクノロジーが生まれない」「革新的なテクノロジーを活用できない」という状態を指すと考えられます。そのような状態で2025年を迎えた場合に、日本は世界からおいていかれることが想定され、DXを進めないといけないと話題になっているのが現状です。
 
ここからは税制の話になります。DXが何か、DXを進めないといけないということは理解いただけたかと思います。日本政府としても、各企業にDXを進め世界に対して競争力をつけてほしいという思いがあるので、DXを進めた企業に対しては税制優遇する方針となっています。新設が予定されている制度として、DX投資促進税制があげられます。以下の点をまずおさえておきましょう。
  ①全社レベルのDXにむけた計画に対して認定が必要
  ②対象設備にソフトウェア、器具備品、機械装置に加えて繰延資産(クラウドシステムへの移行に係る初期費用)が含まれる
  ③設備への投資上限は300億円、投資下限は売上高比0.1%以上
  ④投資額に対し、税額控除(5%/3%)又は特別償却30%の適用をうけることができる

注意点として、DX投資促進税制という名前から、関係する設備投資はDX投資促進税制をうければいいととらえてしまうかもしれませんが、中小企業の場合は既存の中小企業経営強化税制など他の制度を利用したほうが有利な場合も考えられます。設備投資の検討の段階からご相談ください。

2021年3月号 公募開始~事業再構築補助金~

 中小企業庁は、新型コロナウイルス感染症の経済対策の一環で「事業再構築促進事業」として、一定の要件を満たす中小企業・中堅企業に補助金の交付を始めます。この事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響により売上が減少した中小企業・中堅企業などを対象に、新規事業の展開や業務転換を支援するための補助金です。令和3年3月に公募が開始される予定で、1兆1,485億円が確保されております。以前給付されていた持続化給付金と違い、今回の補助金は新たな取り組みを行う企業を対象にしたものです。また、持続化給付金は不正受給が頻発していましたが、今回の交付は「補助金」となりますので、計画書の提出や何に支出したかの経費費目までを審査・管理されることにもなるでしょう。

 さて具体的に、補助金の対象となるケースですが、経済産業省のリーフレットに掲載されていた例として、

◇小売業◇
衣服販売業が、衣料品のネット販売やサブスクリプション形式の事業に業態を転換

◇食品製造業◇
 和菓子製造・販売業が、和菓子の製造過程で生成される成分を活用し、新たに化粧品の製造・販売を開始
といったものがあります。業種の指定はありませんが、いずれにしても、コロナ禍に対応する製品やサービスの変革がキーポイントになるようです。

適用を受けるためには、共通要件3つを満たす必要があります。①任意の3ヶ月(申請前直近6ヶ月から選択)の合計売上高が、新型コロナ以前の同期比で10%以上減少②認定経営革新等支援機関や金融機関と共同で事業計画を策定③補助事業終了後3~5年で、又は、従業員一人当たりの、付加価値額の年率平均3.0(一部5.0)%以上増加の達成。この要件は通常枠の補助金を受ける場合であり、別途違う枠の補助金を受ける場合には、別に個別要件を満たす必要があります。

画像:2021年3月号 公募開始~事業再構築補助金~

なお、申請受付は電子のみを予定しており、具体的には経産省開発の補助金電子申請システム(jGrants)で受け付ける事にしており、jGrantsの利用にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要になります。取得には2週間以上の時間を要するため、補助金の申請を受ける場合には、早めのお手続きをお勧めします。

2021年2月号 国税庁・テレワーク補助の非課税指針公表

2回目の緊急事態宣言下でのテレワーク実施率は全国で22%にとどまるというが、テレワークをしている従業員にとっては自宅で仕事をするにあたり、通信費や水道光熱費が増加しているのではないだろうか。

会社から従業員へ支給するテレワークに伴う経費についての手当は、従業員が実際に支出した業務のための実費相当分に支給されるものであれば所得税の課税は生じない。実際に支出した費用でも、会社が『一律に定額』を支給する場合などは、住居手当などと同様に給与所得として所得税の課税対象になる。

国税庁は15日、新型コロナウイルス禍で広がるテレワーク拡大に対応した課税指針を公表した。
会社が従業員に通信費を補助する際、半額は所得税の課税対象にしないと明示。電気料金も業務で使った自宅の部屋の床面積などを考慮し、一定額を非課税とする。

画像:国税庁・テレワーク補助の非課税指針公表

従業員が在宅で私用の通信機器を使ったり電力を消費したりする場合、どこまでが仕事用なのか判別しにくい。指針は非課税額を算出する計算式を示し、補助が非課税となる「実費相当」の水準を明確にした。

経理担当としては、この指針通りに毎月従業員別に管理するのは大変手間がかかると思われるが、指針とは別に企業が独自に非課税分を精緻に算出するのも認めるとのことなので柔軟に対応してはいかがだろうか。

在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
(参考 日本経済新聞、国税庁)

2021年1月号  脱ハンコ  電子署名と電子サインとは?

2020年は新型コロナウイルスにより、企業も様々な対応を迫られた年でした。その中で、普及したものとしてテレワークやオンライン会議があります。しかし、押印が必要な書類があり、そのためだけに出社するといったケースもあったようです。その為、「脱ハンコ」を目的とした「電子サイン」を導入する企業が増加したそうです。

この度、弊社でも12月よりAdobeSignを導入し電子サインの利用を開始いたしました。これまでは契約書に代表者様の押印を頂くか法務局の商業登記電子証明書やマイナンバーカードによる電子署名を頂いていました。電子サインは電子証明書による電子署名より導入しやすく手間がかからないといったメリットがあります。まず電子署名と何が違うのか比較してみましょう。(下表参照) 

<電子署名と電子サインのちがい>

種類
本人性の担保導入のしやすさ法的効力(証拠力)
電子署名

・電子証明書による電子署名

+タイムスタンプ

・電子証明書を発行する第三者機関による証明

・契約当事者が電子証明書を取得する手間がある・高い
電子サイン

・メールによる本人確認

+タイムスタンプ

・手間や負担が少なく導入しやすい。

(オンラインでのやり取りなので、時間や場所の拘束がない)

・電子署名よりは低い

<電子契約手続きの流れ>(例:AdobeSignを利用し契約書を取り交わす場合)

①依頼者からAdobeSign経由で署名者宛に契約書の確認および署名の依頼メールを送ります。(複数者間の契約の場合、複数人に送信できます。)

②メール受信者(署名者)がメール内の署名用URLより契約書(PDFファイル)を開き、署名(手書きまたは入力)をします。

③署名が完了すると署名済みPDFファイルはオンライン上で保管、依頼者、署名者それぞれに通知されダウンロードできます。(※署名済みPDFファイルは保護され改ざんすることはできません。)

 一連の契約手続きはオンライン上で完結するため、紙で印刷し製本する手間、取引先に出向いたり郵送にかかるコストが減ります。さらに取引先や顧客との契約書だけでなく、社内の保管書類に活用することも可能です。例えば、入社時に従業員と取り交わす雇用契約書・身元保証書・個人情報取り扱いの同意書等の入社書類は、相手が個人でかつ社内書類のため、比較的導入しやすのではないでしょうか。 社内でもハンコによる無駄な業務がないか一度見直してみましょう。


2020年12月号  実は確定申告が必要かも・・日常生活の収入

 

あっという間に12月となり今年も残すところ1か月です。来年になるとすぐに確定申告の時期がやってきます。確定申告なんて縁がないと思っている方も、場合によっては確定申告が必要になるものを紹介したいと思います。

①メルカリなどのフリマアプリでの売却収入

 洋服や生活用品等の不要品を売却した収入は、非課税となるため基本的に課税されません。ただし、130万円以上の貴金属・美術品等の売買により利益が出た場合は譲渡所得として課税対象となります。また、近年問題になっている面もありますが、転売を継続的に行っている場合は事業所得や雑所得として捉えられる場合もあります。

②懸賞での賞品,賞金等

 懸賞に応募して賞品や賞金が当たった場合は、その賞品や賞金が一時所得として課税対象になります。賞品とは違いますが、ふるさと納税の返礼品も同じ一時所得として扱われます。

③競馬

 競馬などのギャンブルでの儲けも基本的には一時所得として課税対象となります。この場合注意が必要なのは負けた分のお金は費用にはならないということです。例えば、100円の馬券を1,000枚購入し(10万円の支出)、そのうちの1枚の馬券が10万円の当たり馬券になったとします。この場合、10万円支払って10万円戻ってきたので利益はないように見えますが、一時所得の計算上は収入10万円に対し、当たり馬券の購入価格100円を引いた金額を所得と考えます。

 

上記の説明を見て、今まで確定申告なんてしてませんけど?と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。上記で紹介した内の譲渡所得・一時所得については、計算上50万円をその所得から控除することができる特別控除という考え方があるため、50万円以上の所得がでていないような少額の場合は、確定申告は必要がありませんのでご安心ください。

また、②の賞金には宝くじが含まれるようにも思われますが、宝くじは非課税として扱われます。これから年末ジャンボ宝くじで10億円当てようと税金はかかりませんので、買われる方は当てて2020年を締めくくれるといいですね。

2020年11月号  定年がなくなる日 ~70歳定年法~

 先日、日本郵便の正社員と契約社員の待遇格差の是非が争われた訴訟の審判決があり、双方には「不合理な格差」があると判断がされました。

 20214月には中小企業にも同一労働同一賃金が施工されますが、同施工日には、企業に対して70歳までの就業機会の確保を努力義務とする「改正高年齢者雇用安定法」(通称・70歳定年法)が施工されます。

現行制度では、全事業主に65歳までの定年引上げ 65歳までの継続雇用制度の導入 ③定年廃止のうち、いずれかを義務付けており、2025年には経過措置が終わります。社会の実態は、本人が希望すれば65歳までは働けるとはいうものの、60歳で一度定年退職し、その後は契約社員などとして継続雇用する仕組みの企業が約8割を占めています。しかし、定年再雇用時の賃金減額について、今までの裁判では容認傾向でしたが、今後の改正によりシニアの働き方の意識は変わってくるでしょう。高年齢者の同一労働同一賃金についても、より一層厳格な判断が下される可能性も否定できません。

70歳定年法は、①~③の現行制度の年齢が5歳上にスライドされ、また新たに、④高年齢者の希望により企業との業務委託契約の締結制度 ⑤事業主自ら、又は委託、出資などをする団体が実施する社会貢献事業に従事できる制度が加わりました。努力義務であるため、直ちに取り組む必要はないものの、2025年に65歳定年制が完全義務化されると、70歳定年法も義務化の方向に社会は動いていくかもしれません。企業側のメリットとしては、労働力の確保や知識・技能の承継があげられます。その反面、人件費が増加するため人事制度や退職金制度の見直しを迫られ、また人材の若返りが図れないことが課題となっております。従業員側は、年金受給の繰り下げの選択肢が増えますが、職場での役職や立場が逆転する、上がつかえるなどの面もあります。

人材不足の解消や社会保障制度の維持のためには、高齢者も今以上に長く働かなければならない時代になりました。今年は「熟年離婚」の前倒し版「コロナ離婚」という言葉も新たに出来ましたが、夫婦関係を良好な状態に保つためには、適度な距離感が必要なのかもしれません。「労働期間の延長」という言葉だけ聞くと、気持ちが暗くなるかもしれませんが、「良好な夫婦関係を継続する」「社会との関わり合いが長くなる」とポジティブに考えてみてはいかがでしょうか。

                   (参考文献:週刊東洋経済)